偽造金塊に「タングステン」が使われる理由…“金と同じ比重”が生み出す完璧な偽装
偽造金塊の素材として「タングステン」が頻繁に用いられるのは、その「比重(密度)」が金と極めて似ているからだといわれています。
古くから金の真贋判定には、水の中での体積と重量から比重を割り出す「水没テスト(比重計を用いたチェック)」が有効とされてきました。しかし、中身をタングステンで作って表面を本物の金で厚くコーティングした精巧な偽造品は、全体の比重が本物の金とほぼ同じになるため、このテストをすり抜けてしまうようです。
また、表面が厚い金で覆われていると、一般的なX線検査でも内部のタングステンを検知できないことがあるといわれています。特殊な機器で内部構造まで検査しなければ、プロの買取業者ですら見抜くのが困難なほど偽造技術は高度化しているようです。したがって、フリマアプリの不鮮明な画像や、素人による手元での確認だけで本物と見抜くのは不可能に近いといえるでしょう。
フリマアプリで偽物を買った場合の「民事上の法的リスク」と実務の壁
もし、フリマアプリ等で偽造金塊を買ってしまった場合、法的にはどのような救済手段があるのでしょうか。民法上は、購入した金塊が偽物であった場合、以下の主張や請求が検討できます。
・「錯誤(民法第95条)」または「詐欺(同第96条)」に基づく契約の取り消しを主張する
・引き渡された目的物が契約内容と適合しないとして、「契約不適合責任(同第562条等)」に基づき、代金の減額や契約の解除、損害賠償を請求する
・悪質な場合には「不法行為(同709条)」に基づく損害賠償を請求する
しかし、ここで立ちはだかるのが「実務上の壁」です。フリマアプリやネットオークションでの取引は匿名性が高く、トラブルになった途端に相手がアカウントを削除して逃亡するケースが後を絶ちません。
法的に相手に返金を求めるためには、まずプラットフォーム運営者等に対する発信者情報開示請求などの法的手続きを行い、相手の氏名や住所を特定する必要があります。仮に相手方が特定できたとして訴訟を提起しても、悪質な業者は裁判に出廷しない可能性も高く、最終的に強制執行の手続きまで必要となると非常に手間がかかります。
さらに致命的なのは、仮に裁判で勝訴判決を得たとしても、相手が詐欺業者の場合はすでに財産を隠匿しているか、自転車操業で口座に残高がない可能性が高く、実際に被害金を回収するのは極めて困難であるという点です。
多忙な資産家が数十万円から数百万円の被害に遭った場合、本業に割くべき貴重な時間を奪われるでしょう。弁護士費用や調査費用をかけて勝訴判決を得ても、実被害の回復ができず、結局は「費用倒れ」になって泣き寝入りを余儀なくされるケースが非常に多いのが現実です。
疑いながら転売したら「詐欺罪」に? 加害者になる「刑事上の法的リスク」
偽物を買ってしまった被害者が陥りやすい危険な罠があります。それは「自分が騙された分を取り戻そうとして、他人に転売してしまう」ことです。
「もしかしたら偽物かもしれない」という疑念を抱きながら、フリマアプリ等で「本物の純金」と偽って出品・販売した場合、「詐欺罪(刑法第246条)」が成立する恐れがあります。
通常、詐欺罪は「人を騙して財物を交付させる」という犯罪類型です。しかし、「偽物である」という確信や立証まで必要でない点に注意してください。つまり、「偽物かもしれないが、それでも構わない(相手が騙されてもよい)」という状態であっても、詐欺罪が成立する可能性があるという大きなリスクがあります。
警察の捜査が入った際、「相場より不自然に安い価格で購入していた」「購入先と連絡が取れなくなっていた」等の客観的な状況から、詐欺罪成立と認定される可能性も否定できません。
このように、わずかな損失を穴埋めしようとしたばかりに、ある日突然逮捕され前科がついてしまうことにより、これまでの社会的信用も一気に崩れ落ち、被害者から一転して「犯罪者」となってしまうリスクは、決して見過ごせるものではないでしょう。
資産防衛の鉄則…金は絶対に「信頼できる販売業者」から買うべき理由
以上の法的リスクを踏まえると、金投資において最も重要なのは「購入ルートの選定」です。
フリマアプリやSNS上の個人間取引で提示される「相場より少し安い価格」には、必ず裏があります。純金のように国際的な相場が確立している資産において、相場から大きく乖離した安値で販売される合理的な理由は存在しません。
安全に資産を防衛し、将来の不安に備えるためには、日本国内の信頼と実績のある地金商、貴金属メーカー、あるいは公的な金融機関などの「正規ルート」から購入することが鉄則です。
少しでも不審な点がある取引先からの購入は見送るべきであり、正規の業者であれば、将来売却する際にもトラブルなくスムーズに買い取ってもらうことができます。
投資の目的は資産を増やすこと、守ることであり、無用な法的トラブルを抱え込む必要はありません。プロでも騙される現代の偽造技術の恐ろしさと、法的手続きの限界(回収の困難さ)を正しく認識し、「金を買うなら信頼できる業者から」という原則を徹底することが、確実な法的リスクヘッジとなります。
