親の死後、突然発覚するきょうだい間の資産トラブル。十分な貯金があるはずだった実家で何が起きたのか――ある家族の事例から、生前における資産状況の透明化と、トラブルを防ぐための適切な対策について考えます。
「嘘だろ、104円しかない…」〈年金月15万円〉〈貯金1,500万円〉79歳母が急逝。49歳長男が遺品整理で手にした預金通帳に「衝撃の痕跡」 ※写真はイメージです/PIXTA

同居する妹の弁明と壊れた絆…資産の透明化に必要な防衛策

由美子さんに悪びれる様子はなく、「自分は長年母の介護をしてきたのだから、これくらいもらう権利がある」と反論しました。しかし、健一さんが確認した限り、母の介護レベルは要支援程度であり、過度な負担があったわけではありません。話し合いは平行線をたどり、きょうだいの関係は完全に壊れることとなりました。

 

健一さんは弁護士に相談したものの、使い込まれた金銭を取り戻すには不当利得返還請求などの法的手段をとる必要があります。それには明確な証拠の提出が求められ、多額の裁判費用と膨大な時間がかかります。すでに資金を使い果たしている由美子さんからの回収は極めて困難であるのが現実でした。

 

内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、2025年(令和7年)における65歳以上の認知症高齢者数は471.6万人、有病率は12.9%(約8人に1人)。判断能力が低下した高齢者の資産を守るため、家庭裁判所による成年後見制度の利用が進められており、その利用者数は令和7年末時点で25万9,901人と着実に増加しています。

 

親が元気なうちに資産の状況を家族全体で共有し、管理の透明性を確保することは、争族を防ぐうえでも重要です。特定の相続人(候補)だけに金銭管理を任せきりにせず、定期的に通帳や資産残高がきょうだいで確認し合ったり、親の認知機能に不安が生じた段階で成年後見制度や家族信託などの法的手段を検討したりすることが、将来の悲劇的な相続トラブルを防ぐ対策となります。