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夕方のスーパーで見た光景に「年金を繰り下げて良かった」
年金の繰下げ受給に関しては、さまざまな意見があります。特に総受取額を考えたとき、“長生きしないと元が取れない”と、ネガティブに捉えるケースもあります。
それでも佐々木さんは、「年金の繰下げ受給を選択して、本当に良かった」と実感したと語ります。
それは、ある平日の夕方、佐々木さんが近所のスーパーを訪れたときのことでした。
夕食の準備のために、妻から頼まれた野菜や牛乳を買い、総菜売り場の前を通りかかったときです。何人もの高齢者が、同じ場所に立っていました。しばらくすると、店員が商品に値引きシールを貼り始めます。
「来た、来た」
その瞬間、待っていた人たちが商品に手を伸ばしました。
「それ、先に取ってたでしょう」
「私はずっとここにいたんです」
そんな声も聞こえました。
昨今の物価高は佐々木さんも実感しているところですが、年金が生活のベースになっている高齢者にとっては死活問題です。なんとか生活費を抑えようと、多くの高齢者が“値引きシール”が貼られるのを待っていたり、見切り品を当てにしたり……それがスーパーでよくみられる光景だったのです。
実際、厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況』によると、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は336万1,000円で、その61.3%を公的年金・恩給が占めています。さらに、公的年金受給世帯の41.3%では収入のすべてを公的年金が占めており、生活意識が「苦しい」と回答した高齢者世帯は52.1%に上ります。
物価高が直撃するなか、年金のみに頼る多くの高齢世帯が家計の切り詰めに追われている実態が浮かび上がります。
一方で、佐々木さんにはまだ余裕がありました。年金月26万円。手取りにすると月22万円ほどです。妻が受け取る年金も合わせると、手取りで30万円を超えます。
物価高は意識するものの、それにより生活に余裕がなくなることはありません。
「もちろん、電気をこまめに消したり、エアコンの設定温度に気を付けたり。そのようなことは当たり前のようにします。しかし、生活に余裕がなくなるほどではない。これも、年金を繰り下げて、受給額を増やしたおかげです」
では、総受給額によっては損をするかもしれない――ということに対しては、どう思っているのでしょうか。
「得か損かは、死なないとわからないですよね。それであれば、日々の生活を安定させられるほうが、私にとっては価値のあることです」