住宅ローンの返済が苦しくなったとき、返済期間を延ばして毎月の負担を軽くする方法があります。しかし、月々の支払いが減ったからといって、問題そのものが解決したとは限りません。ある男性の事例をみていきます。
「一生、ローン返済が終わりません」…〈月収50万円〉55歳サラリーマン、65歳で「残債1,400万円」の絶望 ※写真はイメージです/PIXTA

退職金を使っても、安心できない

ところが、55歳になった現在、高橋さんの考えは変わっています。

 

定年まで、あと10年。65歳までに住宅ローンを返すことだけではなく、その後の生活まで具体的に考えるようになりました。

 

「65歳で1,400万円を返せば、ローンは終わります。でも、退職金をそこに使ったら、その後、手元に残せるか、考えるようになったのです」

 

55歳を迎えた現在、預貯金は300万円ほど。老後を見据えて、順調に資産形成が進んでいるとはいいがたい状況です。

 

もうそろそろ教育費の目処もつきそうですが、60歳定年を迎えると、収入は半分以下になることが確実視されています。そうなると、生活を維持するだけで精一杯になるでしょう。

 

「当初、思い描いた通り、退職金で完済するのも選択肢のひとつですが、そうなると老後資金がどうなるのか……正直、現実的ではないように思えてきて」

 

さらに昨今の金利上昇が、不安を大きくしています。

 

「変動金利で借りているので、金利上昇はやっかいですよ。60歳になれば収入減は確実なのに、返済額が増えるなんて……考えるのもイヤになります」

 

高橋さんのように変動金利を選択し、返済期間延長や退職金での一括返済に依存する計画は少なくありません。

 

住宅金融支援機構『住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)』によると、利用した金利タイプは「変動型」が75.0%と圧倒的多数を占めています。一方で、今後1年間の金利見通しについて「現状よりも上昇する」と見込む割合は全体で73.7%、変動型利用者では76.0%に上ります。

 

さらに、金利上昇時の見直しルール等に理解不足や不安を抱く人も42.6%~55.6%。目先の返済軽減のために返済期間を延ばし、退職金頼みで金利上昇リスクを後回しにする設計は、老後資金の枯渇を招く大きな要因となります。

 

すべての元凶は、退職金を充てにした返済プランだったという高橋さん。

 

「今思えば、退職金があるから大丈夫だと思った時点で、ちゃんと考えていなかったんでしょうね。一生、ローン返済が終わる気がしません」

 

月々の返済を軽くしたことで、その場の家計は立て直せました。しかし、返済期間を延ばした先には、老後の生活がありました。

 

高橋さんは今、65歳でローンを完済することよりも、退職後の生活資金をどう確保するかという問題に直面しています。