(※写真はイメージです/PIXTA)
実家へ帰るたび、母の服が「高級」になっていく
「お母さん、それって結構高い服じゃない?」
東京都内で会社員として働くユイさん(30歳・仮名)は、最近、都内にほど近い神奈川県の実家へ帰るたびに気になることがありました。
68歳の母・ミチコさん(仮名)の服です。
ミチコさんはもともとおしゃれ好き。数年前まで会社員として働き、洋服にもそれなりに気を使う人でした。現在は71歳の夫と2人暮らしで、夫婦合わせた年金収入は月28万円ほどです。
ただしユイさんの記憶では、母は現役時代から何万円、何十万円もする服を次々買うタイプではありませんでした。どちらかというと、ファストファッションとセレクトショップの国内ブランドの服をうまく組み合わせながら、堅実に購入するタイプでした。ところが最近、母が着ている服に、イタリアの有名ファッションブランドなど、ユイさんでも知っている名前が増えていました。
ある日は上質そうなニット、その次はパンツ。気になってネットで調べてみると、円安ということもあり、同じブランドのトップスは新品なら数万円。商品によっては10万円近くするものもあります。
「一人っ子なので、両親の医療や介護のこともどこかで気にしているんです。『まさか貯金を服につぎ込んでいるんじゃないよね?』って」
まず父親に尋ねました。「最近、お母さんの服、高そうじゃない?」しかし返ってきたのは、「そうか? 昔から服好きだっただろ」という頼りない答え。「父は自分の服にも全然興味がないので、本当に何もわかっていなかったんだと思います(笑)」
そこでユイさんは、母本人に直接聞くことにしました。「お母さん、最近ブランド物ばっかり着てない? 老後のお金、大丈夫なの?」
すると母はキョトンとして、「これ? 6,000円くらいよ」と言ったのです。
「このラベルはね…」母が突然ブランドを語り始めた
実はミチコさんが最近夢中になっていたのは、ブランド古着を扱う古着店でした。都内の私鉄沿線にあるその店は、ミチコさんがたまたま見つけたそうです。新品なら数万円するニットやブラウスが、状態によっては1万円前後。仕事をしていたころには少し手を出しにくかったブランドの服も、中古なら楽しめます。しかも、母の楽しみは単に「安く買う」ことだけではありませんでした。
「私はね、90年代から2000年代くらいまでの服がやっぱりしっくり来るのよ。素材もしっかりしている気がするし」
そう話しながら、服の内側のタグを見せて、「見て。このラベルはね、このころに流通していたものなの」と解説し始めたそうです。
「母って、こんなにブランドに詳しかったっけ? って驚きました」
聞けば、お気に入りの古着店のオーナーとすっかり話が合い、店へ行くたびに服やブランドの歴史について教えてもらっているのだとか。
「知らないことを教えてもらえて、世界が広がったのよ」
そう話す母は、とてもうれしそうでした。