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熟年離婚の母、当然と考える「娘との同居」
とりあえず、久美子さんを自宅に招き入れた美咲さん。原因は以前から続いていた夫婦関係の悪化です。夫は定年後も再雇用で働いていましたが、生活費をめぐる口論が増えていたといいます。
「性格の不一致。昔から。あなたが防波堤になってくれていたけど、もうダメ。この先、一生添い遂げるのは無理って言ったら、むこうも『お前と同じ墓には入りたくない』って言うし」
離婚時、自宅は売却しました。売却代金を分け、諸費用を差し引くと、久美子さんの手元に残ったのは約850万円。
「これだけあれば、しばらく1人でやっていけると思った」と久美子さん。その後、家賃6万5,000円の賃貸住宅を借りました。
しかし、生活費は想像以上にかかりました。家賃に加え、食費が4万円前後。光熱費や通信費、保険料などを合わせると、毎月の支出は約15万円になります。それに対して、年金は月9万円。毎月6万円ほど足が出ます。
「貯金を取り崩していたら、10年程度しかもたないと思って。だから、美咲のところに住めばいいと思って、アパートは引き払ってきた」
美咲さんは、その言葉に絶句しました。
美咲さんの部屋は1LDKです。寝室とリビングしかありません。母が来れば、生活空間を共有することになります。
「お母さん、うちは2人で住むような部屋じゃないよ」
「じゃあ、私はどうすればいいの?」
美咲さんはすぐに答えられませんでした。
すると久美子さんは続けました。
「あなた、月に40万円ももらっているんでしょう。私が来たって、そんなに困らないじゃない」
美咲さんは、その言い方に腹が立ちました。
「困るよ。私にも生活があるから」
「親が困っているのに、そういう言い方ある?」
「そっちこそ、そういう言い方はやめてよ」
口論になったものの、親を路頭に迷わせるわけにはいきません。仕方なく、同居を受け入れました。それと同時に、美咲さんは母に東京で仕事を見つけることを要求。また、仕事で忙しい美咲さんに代わって、2人で暮らせる引っ越し先を探すように求めたといいます。
「母との生活も心配ですが、父も心配です。家事をしているイメージがない人なので……」
美咲さんがお互い1人になった高齢の両親を案じるのは、決して過剰な心配ではありません。
内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は、有配偶の2.4%に対し、離別者では9.1%に上ります。
また、頼れる人も相談相手もいない「孤立状態の可能性が高い者」の割合は、離別者で15.1%、単身者で13.1%に達しています。
さらに警察庁によると、令和7年中に自宅で亡くなった単身者は全国で7万6,941人に上り、その約76.6%に当たる5万8,919人が65歳以上の高齢者。特に家事に不慣れな高齢男性が離婚などを機に突如孤立するケースは、生活習慣の乱れや孤独死のリスクを急速に高めます。
熟年離婚による高齢者の単身化や生活困窮、孤立は、その子どもにとっても大きな問題。美咲さんの苦労はしばらく続きそうです。