堅実だと思っていた親の死後、思いもよらない多額の借金が発覚したらどうすべきでしょうか。親の急逝後に想定外の負債が見つかり、相続の判断や手続きに頭を悩ませた女性の事例から、親の負債リスクや後悔しないための対処法を考えます。
「お父さん、嘘でしょ…」〈年金月20万円〉80歳父が急逝、53歳娘が直面した「借金まみれ」という信じがたい現実 ※写真はイメージです/PIXTA

堅実な父に、まさかの借金発覚

東京都近郊に住む安田美穂さん(53歳・仮名)の父、田中茂さん(享年80歳・仮名)は、地方公務員として長く地元に尽くしてきた人物。定年退職したあとは月20万円ほどの年金と退職金、預貯金を取り崩しながら、一人暮らしを続けてきました。

 

20年ほど前に妻を亡くしており、美穂さんは月に1〜2回、父親の様子を見に行っていました。

 

「派手な生活をする人ではありませんでした。むしろ、お金には細かいくらいでした」

 

父の自宅は築45年の持ち家。大きな負債も特に入く、毎月の生活費は10万〜15万円程度。基本的に年金だけで十分で、余った分は預貯金にまわすほどだったと聞いています。

 

そんな茂さんが急性心不全で亡くなったあと、遺品を整理していた美穂さんはおかしな点に気づきます。

 

「お父さん……嘘でしょ!?」

 

スマートフォンに表示された見知らぬ消費者金融からのメッセージ。確認すると、借入先は1社ではありませんでした。消費者金融2社、カードローン1社。さらに、銀行系カードローンの利用履歴も見つかりました。自宅に届いていた郵便物を確認すると、借入残高は合計で約620万円。

 

美穂さんには、兄が1人います。しかし、父との関係は長年疎遠でした。そのため、美穂さん自身も顔を合わせる機会がなく、葬儀で会ったのは実に10年ぶり。そんな兄にもまずは相談しなければなりません。

 

「もしもし。急にごめん。……ちょっと、お金のことで大変なことになってる」

 

借金の額を伝えると、電話の向こうでしばらく沈黙が続きました。

 

「620万円? 何の話だよ。親父、年金もあるし、家もあるだろ」

「私だって、そう思ってたよ」

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、親と離れて暮らす子が父親と会話を『ほとんどしない』と回答した割合は、有配偶女性で11.1%、単身男性では13.0%。

 

美穂さんのように月に1〜2回ほど様子を見に行く子が一定数存在する一方で、兄のように10年もの間、連絡すら途絶えてしまう親子関係もまた、現代社会では珍しくないといえるでしょう。