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退職金に手を付ける気はなかったが…
「新NISAがいいらしい、と聞いたんです。でも、最初は自分には関係ないと思っていました」
千葉県内で暮らす斎藤恒一さん(65歳・仮名)。元公立小学校の教師。40年以上勤務し、定年退職時には退職金約2,500万円を受け取りました。住宅ローンはすでに完済。現在は、月18万円ほどの年金と、妻の月8万円ほどのパート代が生活のベースになっています。
「普通に暮らしていれば、何とかなると思っていました」
ところが、退職後に気になることが増えました。食料品や光熱費などの支出です。現役時代にはあまり気にしなかった数千円単位の値上がりも、年金生活になると無視できません。
そんなとき、元同僚から新NISAを勧められました。
「退職金は安心材料で手を付ける気はない。ただ銀行に預けているだけではもったいない――確かにそうだと思いました」
ただ、妻は反対しました。
「退職金で投資するの? 減る可能性だってあるんだよ」
斎藤さんも迷いました。結局、新NISAの年間投資上限額である360万円含め、1,200万円を投資信託などに回しました。
「退職金の半分強は預貯金でとっておく。ただ預けているのもリスクだと、知人には言われましたが……」
投資を始めると、これまであまり気にしていなかった経済ニュースを隅から隅まで読むようになりました。口座も毎日のように確認します。最初は数万円の値動きにも不安になりました。
「10万円くらい減っていると、『やっぱりやめたほうがいいのか』と思いました」
一方で、相場が上昇すると評価額は増えていきます。その変化が、斎藤さんの考え方を少しずつ変えていきました。
「今までは、お金は減らさないことが一番大事だと思っていました。でも、今となっては、何のために貯めてきたんだろうと思うようになりました」
日本証券業協会『個人投資家の証券投資に関する意識調査(2026年7月)』によると、斎藤さんと同じ65〜69歳の有価証券保有者のうち新NISA口座を「開設済み」と答えた割合は81.0%にのぼります。
また、同口座開設後の意識変化として、22.9%が「長期投資や分散投資を意識するようになった」、9.6%が「ライフプランやマネープランについて考えるようになった」と回答。投資を機に自らの今後の生き方やお金の使い道と向き合い始めるシニアの姿を垣間見ることができます。