負債30億円・競売9件を超えて…企業再生に成功した「会社分割」という選択肢

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株式会社喜望大地
負債30億円・競売9件を超えて…企業再生に成功した「会社分割」という選択肢

25歳で家業を継ぎ、地方都市で年商50億円の成功企業へと急成長させながらも、後に30億円の負債を抱えるという波乱の経営者人生を歩んできた、株式会社喜望大地 会長の喜多洲山氏。絶望的な状況から、いかに事業と社員を守り抜き、再生への道を切り拓いたのか?「倒産」でも「民事再生」でもなく、「会社分割」を選んだ経緯と詳細について話を伺った。

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特別送達100通、競売9件。嵐の中で直面した「レッドカード」

30億円の負債を前にした時期は、真っ暗なトンネルの中で重い荷物を背負い、手探りで歩いているような状況でした。ピーク時には社員・パート合わせて約250名のスタッフを抱えていましたから……。グループで携帯ショップや結婚式場の紹介センターなどの事業も展開していたので、拠点は30以上。「どうやって社員の生活を守ろうか」と悩みつつ、注文を受けた商品を無事に納品しなければなりません。

 

支払いが滞ると、まず届くのが内容証明です。サッカーで言えば「次は退場」という警告のイエローカードのようなもので、それが300通以上届きました。さらに放置すれば、裁判所から「特別送達」が届きます。これは「一発退場」を意味するレッドカード。「差し押さえ命令」や「不動産の競売決定通知」といったレベルの内容で、これが100通以上送られてきました。まともな感覚なら夜も眠れないような状況です。その中で「何とかしたい」と必死に打開策を模索していました。社員も家族も、本当に心配していたと思います。

 

結局、不動産については会社と個人で9物件も競売にかかりました。これほどの修羅場を経験した人間は、なかなかいないと思います。

なぜ「民事再生」ではなく「会社分割」だったのか

債務を大幅にカットする「民事再生法」という選択肢は、当時すでに存在していました。裁判所に申し立てることによって「負債を9割カット」し、「残った1割を5年で払いなさい」といった再生の制度ですが、世間では倒産企業となります。

 

しかし私どもが手掛けていたのは、結婚式の引き出物や中元・歳暮を扱うギフト事業です。「実はこれ、倒産した会社の商品なんです」というわけにはいかないじゃないですか。ですから、民事再生という選択肢はないと考えました。

 

そこで必死に他の手段を研究していた時、弁護士の後藤孝典先生の本に出会ったんです。後藤先生は『債務超過でもできる会社分割』という書籍を出版されていました。その本を読み、講演にも足を運んだうえで当社の顧問弁護士に相談したところ、「これしかない」と確信しました。

 

会社分割というのは、格好良く言えば「組織再編」ですが、1つの会社を2つに分ける仕組みです。負債を抱えた「Bad」と、負債がなく事業が生きている「Good」に分け、「Good」を生かすスキームです。

 

方針を決めた私は、大阪の「国際交流センター」に約200社の仕入先様をお招きしてプレゼンテーションを行いました。「皆様には迷惑をおかけしません。なぜなら『会社分割』という手法で過剰債務の会社と別に、負債のない新会社を運営していくからです。しかも、すでにスポンサーがついています」と説得しました。

 

「Good」の会社は当時、2億円以上を納入して応援してくれていた仕入先様に引き受けてもらい、私は「Bad」の会社の債務整理をしていくことになりました。そうやって何とか、苦境を乗り越えたわけです。

「第二会社方式」が当たり前になった現代と経営者の覚悟

「会社分割」という手法は当時、非常に珍しく、金融機関からの強い反発もありました。しかし現在では「第二会社方式」として、事業再生のスタンダードな手法となっています。第二の会社を作りそちらで事業を継続し、過剰債務の会社は特別清算を行うことで、銀行借り入れを中心にカットしてもらう形です。

 

特別清算には債権者の同意が必要であり、債権者である銀行に納得していただいて初めて可能になります。会社自体がなくなりますので、銀行は不良債権を100%償却できます。そういった意味で「過剰債務の場合は、債権放棄もやむなし」という世の中に変わってきたんです。以前は「債権放棄なんて絶対にダメ」「連帯保証人も社長以外に2人は必要だ」という風潮でしたが、今は「社長の個人保証も不要」と言われる時代です。世の中が良い方向に変わってきました。

 

社長自身が追い詰められて混乱している場合は、事業再生を専門に扱うコンサルタントや、公的支援機関である「中小企業活性化協議会」を頼ると良いでしょう。特に「中小企業活性化協議会」は国が設立した組織で、各都道府県に設置されています。社長とメインバンクが一緒に赴いて支援を依頼すれば、財務デューデリと事業デューデリ実施後に経営改善計画書の作成を支援してもらえます。そして「明らかに過剰債務なので、何割かカットする必要がある」と判断してもらえれば、銀行の賛同も得られやすくなります。こうした新たなスキームが確立されたことで、より事業再生がしやすい環境になったと言えます。

苦汁の決断から始まった第二の人生

「Good会社」を手放す際、悔しい思いがなかったと言えば嘘になります。しかし大勢の社員や事業を救うために、自分が身を退き、第二の人生を歩むことにしました。不本意ではありましたが、悩んでいても仕方がない。時間との戦いでしたから。

 

あの時の私のように苦しんでいらっしゃる経営者の方々に伝えたいのは、「何を優先するか」ということです。私の場合、過去を振り返って「拡大主義で失敗した」と気付きました。そこでいち早く撤退し、最大の黒字だった本店を残す形で事業縮小に努めました。もしやり直せるなら、拡大主義を途中で止めてネット通販に特化し、生き残りを賭けるでしょう。そうした展開ができていれば、IPO(新規上場)も実現していたかもしれません。

 

しかし、与えられた環境でベストを尽くすことが大切であり、過ぎたことを言っても始まりません。「Good」と「Bad」で会社を分割し、「GoodをM&Aで売却するのが、その時点でのベストな選択だった」ということです。

 

事業再生家となった現在、私はこの手法を用いて数十社を経営危機から救ってきました。会社分割は専門知識と経験が必要な分野ですので、事業再生の専門家と弁護士・公認会計士等の専門士業に相談することをおすすめします。債権放棄に伴う金融機関への説明責任を果たしつつ、実現可能な事業計画書を提示して賛同を得られるよう努力することが大切です。

 

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