義父からのありがたい資金援助。心から助かったはずの好意に対し、なぜ嫁は「ごめんなさい」と頭を下げなければならなかったのでしょうか。ある事例から、親からの資金援助の先で起こりうるトラブルについて考えます。
「お義父さん、ごめんなさい……」孫の塾代「100万円」をポーンと援助した〈78歳義父〉、42歳嫁が懺悔のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

兄弟に不公平感…難しい「資金援助」の実態

「親父から100万円もらったと聞いたけど、本当か?」

 

義実家に浩二さんの兄・浩一さん(48歳)らも集まった時に、ふと博さんから100万円もらったことが話題にあがりました。

 

浩二さんが「塾代にって、親父から言ってきたんだ」と説明すると、浩一さんは黙り込みました。どこか「不公平だ」と言いたげです。浩二さんは続けました。

 

「兄貴は家を買うときに500万円もらっている。だから、今回100万円をもらったからって、不公平という話じゃない」

 

12年前、浩一さんが自宅を購入した際、博さんは500万円を援助していたのです。当時、博さんは70歳前後。現役時代から貯めてきた資金があり、「長男が家を持つなら」と援助したといいます。浩一さんは反論します。

 

「12年前の500万円と、今の100万円は一緒じゃない。あの500万円は家を買うための金だ。今回は子どもに使う金だろ」

 

話は次第に、教育費から相続の話へ変わっていきました。

 

「親父、財産をどうするつもりなんだ?」

 

この一言に、博さんは怒りました。

 

「お前たちは、俺が生きているうちから相続の話をするのか」

 

それでも浩一さんは引きません。

 

「そうじゃない。あとで揉めるのが嫌なんだよ。弟の子どもに100万円、俺の子どもにはゼロ。これで親父が死んだあとに『全部平等に分ける』なんて言われても、納得できないだろ」

 

美穂さんは、そこで初めて怖くなりました。自分が受け取った100万円が、将来の争族の火種になる――この一件で夫婦は、100万円を返すことも考えました。しかし浩二さんは「それで親父が納得するわけがない」と言います。

 

実際、博さんは返金を拒みました。

 

「私の金だ。私が孫のために使いたいと思って出した。浩一に何か言われたから返すなんて、そんなことはしなくていい」


美穂さんは今も、100万円を受け取った

 

こと自体を後悔しているわけではありません。長男の受験費用として、本当に助かったからです。それでも、義父にはこう伝えました。

 

「お義父さん、ごめんなさい。子どものためにいただいた100万円なのに、家族を揉めさせるきっかけみたいになってしまって……」

 

博さんは「美穂さんが謝ることじゃない。私が生きているうちに、ちゃんと整理しておけばいいことだから」と言ってくれました。

 

博さんの言葉通り、生前の財産整理は「争族」を防ぐために重要です。最高裁判所『令和7年 司法統計年報(家事編)』によると、遺産分割事件(認容・調停成立、分割しないを除く)の総数8,321件のうち、遺産の価額が1,000万円以下は2,938件、5,000万円以下は3,519件で、5,000万円以下のケースが全体の約77.6%を占めています。

 

「相続争いは資産家だけの問題」と思われがちですが、実際には一般的な資産規模の家庭ほど、明確な遺言の遺し方や生前贈与の整理を欠いたことで大きなトラブルになりやすいのです。博さんのように「生きているうちの整理」を進めることが、残された家族の絆を守るための有効な選択肢になります。