生前に「全部捨てる」必要はない…重要書類だけは元気なうちに確認を

親子関係にヒビを入れず、かつ将来の金銭的・身体的リスクを回避するためには、どのような手順で実家の整理を進めるべきでしょうか。FPから4つのポイントを解説します。

1. 「捨てる」ではなく「安全・快適な生活」を目的にする
親に片づけを提案する際は、「捨てる」という言葉を使わないほうが賢明です。「これからの暮らしを安全で快適にするため」と伝えましょう。 まずは家全体ではなく、玄関、廊下、階段、寝室からトイレへの動線など、「転倒リスクの高い場所の床にモノを置かない」ことだけに絞って進めます。

2. 親の決定権を守り、「捨てる以外の出口」を用意する
どんなに不要に見えるモノでも、勝手に処分してはいけません。判断に迷うものは無理に捨てさせず「保留ボックス」のようなものを作って一時保管します。 また、未使用の引き出物や蔵書などは、リサイクルショップの出張買取や寄付を活用するのも有効です。ゴミとして捨てるのではなく、誰かに使ってもらう方法であれば、手放すことへの心理的抵抗が大幅に和らぐでしょう。

3. 片づけと同時に「重要書類・財産の棚卸し」を行う
 片づけは、預貯金通帳、保険関係の書類、不動産の権利証、実印などがどこに保管されているかを親自身に整理してもらうよい機会です。 親の認知判断能力が低下し、本人の意思確認が難しくなれば、預金の引き出しをはじめとする金融取引や各種手続きが、それまでと同じようにはできなくなる場合があります。元気なうちに親自身が整理し、「何かあったときに必要なものがどこにあるか」を家族と共有しておくことが重要です。

4. あえて「生前にすべてやりきらない」という割り切りを持つ
一方で、あえて「生前にやりきらない」という割り切りも現実的な選択です。親がどうしても手放せないモノまで無理に捨てさせれば、親子関係そのものが壊れます。親が残しておきたい思い出の品は将来、費用をかけて業者に頼むと決めておけば、親も子も気持ちが楽になるでしょう。

生前整理は、残される子どものためだけに行うものではありません。これからも親が自分の家で安全に、気持ちよく暮らすために何が必要なのか。そこから考えれば、すべてのモノを捨てることが正解ではないはずです。

洋美さんも敦子さんと改めて話し合い、「廊下や床にあるモノだけは減らす」「押し入れの中の思い出の品には勝手に触らない」と決めました。遠回りに見えても、それが親子で生前整理を続けていくための近道といえるでしょう。

参考:ブルークリーン株式会社「ご自身の実家に関するアンケート 2026年7月」(調査対象:親が実家に住んでいる30代以上の男女/有効回答数500人)

松田聡子
CFP®

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