物価高が続くなか、年金だけでは暮らせない親を子どもが支えている家庭は少なくありません。しかし、子ども自身の収入にも余裕がなければ、仕送りを続けることで親子ともに生活が苦しくなることがあります。年金月7万円で暮らす72歳の母と、年収280万円の43歳の娘の事例をもとに、「親族の扶養」と生活保護の関係、申請を検討するときのポイントを行政書士が解説します。
「私の年収は280万円…もう仕送りできません」43歳会社員の苦悩。月7万円の年金で暮らす72歳母に生活保護を勧めてもいいのか【行政書士が解説】 ※写真はイメージです/PIXTA

年金をもらっていても「足りない分」を生活保護で補える可能性がある

年金を受給していると生活保護は受けられない」と思われている方もいますが、これも誤解です。

 

生活保護は、国が定める基準で算出した最低生活費と、その世帯の収入を比較し、収入が最低生活費を下回る場合に不足分を補う仕組みです。年金は収入として扱われますが、年金額だけで最低生活費に届かなければ、差額が保護費として支給される可能性があります。

 

たとえば母親が月7万円の年金を受け取っている場合でも、それだけで生活保護の対象外になるわけではありません。実際の最低生活費は、年齢、居住地域、家賃、世帯状況などによって異なるため、「年金が7万円だから生活保護を毎月いくら受け取れる」と単純には計算できません。

 

また、娘から仮に毎月1万円の仕送りを受けているのであれば、その援助も原則として収入として考慮されます。そのうえでなお最低生活費に不足する部分があれば、生活保護の対象となる余地があります。

 

私が提案したのは「仕送りの増額」ではなく「母親自身の制度利用の確認」

私はAさんに、無理に仕送り額を増やすのではなく、まずは母親の居住地を管轄する福祉事務所へ相談し、生活保護の対象となる可能性を確認することを提案しました。

 

その際には、母親の年金額、預貯金、家賃、保険などの資産状況を整理し、Aさん自身も「援助できるとしてもこの程度までで、それ以上は自分の生活に支障が出る」と事実を率直に説明することが大切です。生活保護の申請では、預貯金や保険、不動産などの資産、年金などの収入、親族からの援助の可否などが調査されます。

 

また、年金額が低い高齢者の場合は、「年金生活者支援給付金」など、ほかの制度を利用できないかも併せて確認しておくとよいでしょう。

 

親を思う気持ちと、すべてを自分で背負うことは同じではありません。親子がともに生活を崩してしまう前に、公的制度を利用して暮らしを立て直すことも一つの支え方です。

 

Aさんには、「生活保護を勧めることは、親を見放すことではありません。お母さまが自分の生活を維持できる方法を一緒に探すことも、十分に親孝行だと思います」とお伝えしました。

 

 

吉本 翼

Wing社会保険労務士・行政書士事務所

代表