住宅金融支援機構の『住宅ローン利用者の実態調査』によると、分譲マンション購入者の約半数が住宅ローン返済に「負担感がある」と回答しています。共働きによる高い世帯年収を前提に高額なペアローンを組むケースが増加する一方で、病気や休職など予期せぬトラブルによって収入が減少した途端、たちまち返済不能に陥るリスクも潜んでいます。30代夫婦の事例をみていきましょう。
「余裕で返せるはずが…」8,800万円のタワマンを購入した〈世帯年収1,600万円〉30代夫婦の誤算。幸せそうな家族から〈目を背ける休日〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

「余裕で返せる」世帯年収1,600万円・30代夫婦がペアローンで購入した〈8,800万円のタワマン〉

「夫婦二人の収入があれば、これくらいのローンは余裕で返せるはずだったのですが……」

 

都内の大手IT企業で働くサヤカさん(仮名・35歳)の年収は700万円、大手メーカー営業職の夫・ダイスケさん(仮名・37歳)の年収は900万円です。世帯年収1,600万円に達する夫婦は、周囲から見ても経済的に恵まれたパワーカップルといえます。

 

二人は結婚して数年が経過したころ、都内でも子育て世代から人気を集めるファミリー向けのエリアに、約8,800万円の新築分譲タワーマンションをペアローンで購入しました。当時の二人は、自分たちのキャリアや将来の収入に対して強気な見通しを持っていました。

 

毎月のローン返済に管理費や修繕積立金などを含めると、住居にかかる固定費は約34万円に達しましたが、当時の世帯収入から考えれば十分に支払える範囲だったといいます。

 

国土交通省が発表した『令和6年度 住宅市場動向調査報告書』によると、首都圏を含む三大都市圏において分譲集合住宅(分譲マンション)を取得した世帯の平均年収は1,015万円であることがわかっています。世帯年収1,600万円を誇るサヤカさん夫婦の所得は、マンション購入世帯の平均を大きく上回る水準であり、将来に対して強気な見通しを抱いたこともうなずけます。

 

しかし一方で、住宅金融支援機構が公表した『住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)』によれば、分譲集合住宅を購入した世帯のうち、現在の住宅ローン返済について「非常に負担感がある」または「少し負担感がある」と答えた人の割合は合計49.7%に達しています。

 

マンションの周辺には整備された公園が広がり、休日になると楽しそうに歩く親子連れでにぎわっていました。その光景を目にするたび、「いつか私たちもこの街で温かい家庭を築く」と信じて疑わなかったサヤカさん。

夫の休職で収入激減…家計を圧迫する「月34万円の住居費」

しかし、憧れのタワマン生活で予想もしないアクシデントに見舞われたのは、引っ越しから2年目を迎えたころでした。

 

ダイスケさんが連日の激務と職場の人間関係から過度なストレスを抱え込み、休職に追い込まれてしまったのです。傷病手当金が支給されるとはいえ、毎月の給与収入は大きく減少し、見込んでいたボーナスも支給されなくなりました。

 

「このままだと、貯金がなくなっちゃう……」

 

世帯収入が激減した途端、毎月34万円という住居費が家計を圧迫し始めます。サヤカさんの収入だけでは日々の生活費すら賄えず、お互いが独身時代に貯めていたお金を取り崩してしのぐ日々が始まりました。

 

「配偶者の休職による収入減」というトラブルは、住宅ローンを返済する共働き世帯にとって最大の脅威となります。生命保険文化センターの『生命保険に関する全国実態調査(令和6年)』では、世帯主が病気やケガなどで長期間働けなくなった(就業不能となった)場合の家族の生活資金について、74.6%もの世帯が「不安(非常に不安・少し不安)」を感じていることが示されています。

 

さらに同調査において、実際に就業不能となって収入が途絶えたり、大幅に減少したりした場合の経済的備えについて尋ねた項目でも、68.8%が強い不安を抱いていることがわかります。どれほど現在の世帯年収が高くても、ローンという大きな固定費を抱えている限りは、夫婦どちらかの収入がストップした瞬間に家計の安全性は崩れ、サヤカさんのように精神的に追い詰められてしまう可能性は十分に考えられます。