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【祖母から孫へ】佐和子さんから遺言で次男へつなぐ
そこで、一次相続では佐和子さんが自宅を相続し、美香さんが預金など約3,000万円を相続します。そのうえで、佐和子さんが「自宅は次男に譲り(遺贈し)、預金は美香さんに相続させる」という遺言を作ります。この現金は、美香さんの生活費にもなります。
この形なら、自宅は美香さんを経由せず、祖母から孫へ直接引き継がれます。美香さんの財産は父からの約3,000万円と母からの約4,000万円で計約7,000万円。美香さんの相続で長男が持つ遺留分は概算約1,750万円となり、自宅を経由する場合より約3,000万円抑えられます。
今回は生前に自宅を処分する必要がなく、目的も死後の承継に限られていました。佐和子さんが78歳であることも踏まえ、民事信託、いわゆる家族信託ではなく、構成のシンプルな遺言を選びました。
もっとも、この方法にも前提があります。相続人でない孫への遺贈には、原則として相続税の2割加算があります。次男は現在、佐和子さんと同居していないため、現状のままでは小規模宅地等の特例も使えません。
一方、将来、次男が実家へ移り住み、相続開始の直前から同居し、申告期限まで居住と保有を続けるなどの要件を満たせば、土地の評価を8割下げられる可能性があります。その場合は2割加算があっても、一次・二次を合わせた税額は概算約370万円。美香さんがすべて相続する場合の約810万円を下回ることもあり得ます。
つまり今回の方法は、「税金を多く払って実家を次男に残す」という選択とは限りません。将来の暮らし方によっては、実家をつなぎながら税負担も抑えられる余地があります。ただし、美香さんが佐和子さんより先に亡くなれば、長男と次男が美香さんに代わって佐和子さんの相続人となり、長男には佐和子さんの相続について概算約4,000万円の遺留分が生じます。亡くなる順番や居住状況が変われば、遺言の見直しも必要です。
税金の答えより、家族が納得できる道筋を
相続では、最初に税金の答えを出し、それに家族を合わせるのではありません。
相続税、遺留分、不動産の時価、二次相続、家族の暮らしと想い。判断する人も分野もばらばらです。それらを一つずつ並べ、家族が「これでいこう」と思える形にする。それが、私が「整理役」と呼んでいる仕事です。
相続税が一番安い方法が、その家族の心を一番軽くする方法とは限りません。そして、相続対策に絶対はありません。家族の状況が変われば、見直しも必要です。
それでも、一つずつ整理していけば、「これでいい」と思える形は見つかります。遺言を作って終わりではありません。次に考える必要が生じたときには、また一緒に整理すればよいと考えています。
田中 康雅
司法書士田中康雅事務所
代表