学習指導要領の改訂により、2022年(令和4年)4月から高校で金融教育が必修となるなど、近年は子どもに対する「金融教育」の重要性が一段と高まっています。しかし、金融教育は学校だけでは十分とはいえません。身近にいる大人のお金との向き合い方やライフスタイルが子どもの金銭感覚に大きく影響するためです。78歳のサヨコさん夫婦(仮名)も、一度は孫たちの“おねだり”に頭を抱えましたが、“ある行動”が孫たちの将来を大きく変えるきっかけになったようです。CFPの山﨑裕佳子氏が、事例を通して、家庭でできる金融教育のポイントについて解説します。
もう買えない…年金月25万円・78歳夫婦、孫の「おねだり」で老後破産寸前→「まさかの貢ぎ物」に救われ、10年越しの再会で涙した〈孫のひと言〉【CFPが解説】
祖母の家計簿に興味津々…孫の未来を変えた「おこづかい帳」
このままでは、老後不安は大きくなるばかりです。そこでサヨコさんは一念発起して、「家計簿」をつけることにしました。
実は、これまでなににどれくらい使っているのかを正確に把握しておらず、いわゆる「どんぶり勘定」で家計を回していたのです。すると、支出のムダが見えるようになり、預金を取り崩す頻度も徐々に減っていきました。
それから1年ほど経った夏休みのこと。小学生になったアオイさんとミオさんを2週間預かることになりました。
夕飯の片づけが終わったあと、サヨコさんは毎日の習慣となっている家計簿をつけるべく、机に向かいます。テーブルに家計簿と計算機、レシート類などを広げると、ちょうどお風呂からあがった孫たちがサヨコさんの元に近づいてきました。
「おばあちゃんなにしてるの?」「それ、なぁに?」
無邪気に尋ねる2人に、家計簿とはなにかを説明すると、思いのほか「わたしも書きたい」「やってみたい」と興味津々です。
そこでサヨコさんは、2人にこう言いました。
「わかった、わかった。明日、『おこづかい帳』を買ってあげるわ。書き方も教えてあげるから一緒にやってみよう」
翌日、「おこづかい帳」を手にした2人は、サヨコさんから「使い方」と「ルール」を教えてもらいました。ルールは次の2つです。
・「入ってきたお金(小遣い)」と「使ったお金」を記入すること
・次のおこづかいをもらう前に必ず見直すこと
とはいえ、小学生の2人にとっての収入は、毎月親からもらうおこづかいと、正月にサヨコさん夫婦や親戚からもらう「お年玉」くらいのものです。
そこでサヨコさんは、「そうだ。明日から、お手伝いしてくれたらおこづかいをあげるわ」と提案。
その日以降、風呂掃除をしたり、洗濯物をたたんだり、食器を洗ったり、2人は率先してお手伝いをするようになりました。夫婦は家事が楽になり、孫たちはその対価として少額のお金をもらい「おこづかい帳」に書き込む。このようにして、お互いに充実した夏休みを過ごしました。
「おばあちゃんのおかげで…」10年後、成長した孫からの“サプライズ”に感涙
それから10年以上が経ち、すっかり大きくなった孫たち。親戚の結婚式のあとで久しぶりに話をすると、2人は思いもよらない言葉を口にしました。
「おばあちゃん、あの夏休みに買ってくれたおこづかい帳。覚えてる? あれからずっと続けててね。いまは紙じゃなくてアプリになったけど……。友達にもよく言われるの、しっかりしてるねって」
「おばあちゃんのおかげで、お金のことを真剣に考えるようになった。いまは将来のことも考えて、アルバイト代から少しずつ貯金してる」
「自分の家計簿が孫の金銭感覚に影響するなんて……」と、サヨコさんは驚きと嬉しさが入り混じり、涙をこらえきれませんでした。
