「お父さん、今年もあそこ予約したから!」――娘からの弾んだ電話に、正孝さん夫婦は絶句しました。去年の猛暑の中、旅行代18万円を全額負担した上に熱中症寸前まで孫の世話をさせられた、あの「地獄のグランピング」。喉元過ぎればでうやむやにしていた1年後、再び悪夢が襲いかかります。なぜシニア世代の援助は断れず、膨らみ続けてしまうのか? 老後を守るための見直し方を、FPの三原由紀氏が解説します。
「このままじゃ破産するぞ」…総額18万円〈地獄の夏休み旅行再来〉に60代年金夫婦、顔面蒼白。「いくら可愛い孫でも無理です」のワケ【FPの助言】
うやむやだった“孫費用”…初めてわかった「想像以上の支出」
「……今年のグランピング、どうする? 体力も厳しいけれど、正直家計も厳しいわよね。確か去年18万円ぐらいかかったのよね。ほかにも、私たちからちょこちょこお金渡してるじゃない?」
溜息をつきながら、そう話す由紀子さん。娘夫婦は、小さな子ども2人を抱えながらの二重生活。「単身赴任はお金がかかる」と常日頃から不満を漏らしていました。それを聞いた正孝さん夫婦は「大変だろうから」と、2年ほど前から毎月2万円を生活費の足しにと渡すようになっていました。
それに加えて、お年玉や誕生日プレゼントなども、しっかりと渡しています。クレジットカードの履歴などを追いかけると、年間5万円ほど。こうしたお祝い事の費用と、仕送りや旅行費を初めて計算してみたところ、意外なほど金額は膨らんでいました。
「去年1年で47万円ちょっとだ。おい、このままじゃ破産しかねないぞ。いくら孫が可愛いっていっても……」
約47万円の支出が仮に10年続けば約470万円という大金になり、貯蓄の3分の1以上を失う計算です。また、折しも今年は、10年以上使っている給湯器の調子が悪く、買い替えを検討していた時期。そのうえ旅行代を出せば、限られた貯蓄が一気に減ってしまいます。
仕送りも、友美さん一家のためを思ってのことでしたが、はたしてこの2万円は本当に生活費として役立っているのか、それとも別の用途に消えているのか――。正直なところ確認したことはありませんでした。
「孫のためなら」に隠れた、祖父母世代の構造的な役割固定
正孝さん夫婦のようなケースは、決して特別ではありません。ハルメクホールディングスの調査によると、シニア女性が孫のために直近1年間で使った金額は平均約18万円で、2025年は「20万円以上」と回答した割合が2023年から5ポイント以上増加しています。しかし正孝さん夫婦の場合、毎月の仕送り(年24万円)と旅行費(18万円)、その他のお祝い事(5万円ほど)を合わせると、年間で約47万円。平均の2.5倍以上にのぼります。
同調査では、孫と直接会う頻度は変わらない一方でそれ以外のコミュニケーションは減少し、支出だけが増えているという実態も明らかになっており、「会える機会が限られるほど、お金や労力で埋め合わせようとする」傾向がうかがえます。
問題は、金額そのものよりも「困っているならなんとかしてあげたい」「大変な思いをしている娘に、これ以上は言えない」という遠慮の積み重ねで、援助が少しずつ膨らんでいく点にあります。子育てや仕事から一線を退いた高齢期において、孫や子ども家族の役に立てることは、「まだ自分は必要とされている」と実感できる、数少ない機会になりがちです。
だからこそ、負担が増えても「そろそろ見直したい」と言い出しにくい。我慢を重ねるうちに負担だけが拡大していく構造に陥ってしまうのです。