子どもが独立し、「これからは自分のために生きたい」と考え始めた58歳の女性。離婚したママ友の姿に心を動かされ、自身も離婚を考えます。ところが、年金事務所で分割後の年金見込額を確認し、FPに相談したことで、「離婚すれば自由になれる」と考えていた彼女の気持ちに変化が生まれます。佐藤恵美さん(仮名・58歳)の事例をもとに、FPの三原由紀氏が解説します。
「私も離婚しようかな」自由になった友人をうらやんでいた58歳女性が、結婚生活を続けることにした〈離婚後の年金額〉
「私も自由になりたい」離婚したママ友がうらやましい58歳女性
「私も、自由になりたいな」
佐藤恵美さん(仮名・58歳)がそう考えるようになったのは、20年来のママ友・ユミさん(仮名・62歳)と久しぶりに食事をした日のことでした。
ユミさんは2年前、60歳のときに30年以上連れ添った夫と離婚。財産分与を受け、現在も週3~4日ほどパートで働いています。
「一人になって、お金は大丈夫なの?」
恵美さんがたずねると、ユミさんは笑いながら答えました。
「楽じゃないよ。前より考えて使ってる。でも、今日は何を食べるか、休みの日に何をするか、自分で決められるのが私はラクなの」
話を聞くと、決して余裕のある一人暮らしではないと言います。それでも、自分の生活を自分で決めているユミさんの姿が、恵美さんにはとても生き生きして見えました。
恵美さん夫婦が65歳から受け取れる年金は、月26.6万円
恵美さんが夫と結婚したのは25歳のとき。短大卒業後に地元企業へ就職し、入社から5年ほど経ったころに親戚の紹介で2歳年上の夫と結婚しました。
2人の子どもを育てながら扶養の範囲内でパートを続けてきた恵美さんの収入は、月9万円ほどです。一方、大手企業に勤め、60歳の現在も再雇用でフルタイム勤務をする夫の月収は、約25万円です。子どもは2人とも独立し、住宅ローンも完済。夫婦の金融資産は約2,000万円あります。
現在(夫60歳時点)の年金記録で試算すると、65歳から受け取れる年金見込額は夫が年226.8万円、恵美さんが年92.98万円。夫婦で年間319.78万円、月26.6万円ほどの年金が受け取れる見込みです(いずれも、今後の就労状況によって変わりうる試算です)。
夫に浮気や浪費など大きな問題があるわけではありません。ただ、家事や子育てはほとんど恵美さんが担ってきました。
ユミさんと会った日の夜、恵美さんが帰宅すると、夫がいつものように声をかけてきました。
「今日のメシ、何?」
その瞬間、恵美さんはふと考えます。
「この生活を、あと20年も30年も続けるの? 私も、これからは自分のために生きてみたい」
子育てが終わり、「母親」としてやるべきことが減ったからこそ、自分の残りの人生を考える時間ができたのでしょう。恵美さんは初めて、本気で離婚を考えるようになりました。