【FPからのアドバイス】会社員というアドバンテージを手放す前に

亘さんのような「実質FIRE状態の会社員」という生き方は、FP(ファイナンシャル・プランナー)の視点から見ても、理にかなった選択といえます。会社員という立場には、辞めてみて初めて気づくメリットが数多くあるからです。

会社員のメリットとして、まず安定したキャッシュフローが挙げられます。運用資産は暴落すれば大きく目減りしますが、給与は相場と関係なく振り込まれます。資産の取り崩しを始めた直後に大暴落が来れば、回復を待てずに資産寿命が大きく縮むおそれがありますが、給与収入があれば、その局面を「買い増しの好機」に変えることさえ可能です。

また、社会保険があることも見逃せません。会社員の健康保険料・厚生年金保険料は労使折半ですが、退職すれば保険料は全額自己負担になり、厚生年金の上乗せもなくなります。働き続ければ、その分将来の年金額も増えていきます。 そして、意外に大きいのが、社会的信用です。無職の50代と勤続30年の会社員とでは、賃貸契約の審査などでの扱いが大きく異なります。

さらに、所属と役割を失うことによるアイデンティティの喪失は、お金では測れない心理的なダメージになり得ます。 退職したものの会社員に戻りたくなったとしても、50代で前職と同等の条件での再就職は簡単ではありません。

FIREを検討するなら、早期退職という表面的なゴールにとらわれず、経済的自立を「選択の自由」として捉え直すことが大切です。その自由には、会社員を続けるという選択も含まれます。

完全リタイアの前に、以下の4点を確認してみてください。

1)年間生活費を実額で把握しているか
2)収入ゼロでも数年間耐えられる現預金があるか
3)退職後の社会保険料や年金見込み額を試算したか
4)仕事に代わる時間の使い道があるか

今日も亘さんは、定時とともに静かに姿を消します。それは「逃げ」ではなく、長い時間をかけて手に入れた「選べる側」の余裕なのかもしれません。

【出典】
株式会社AlbaLink「FIREに関する意識調査」
 https://wakearipro.com/financial-independence-retire-early/

厚生労働省「労働安全衛生調査(令和6年)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf

松田聡子
CFP®

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