お金があることが「社会復帰」を遠ざけることも?

内閣府や総務省などの調査では、40〜64歳のいわゆる「中高年ひきこもり」は全国で推計100万人を超えるとされています(内閣府「生活状況に関する調査」等)。背景には、精神疾患、人間関係、離婚など、さまざまな事情があります。今回の康介さんも、会社での孤立と離婚という大きな出来事が重なり、心が折れてしまいました。

精神的に追い込まれた人にとって、まず必要なのは十分な休養です。無理に社会復帰を急がせることが、かえって症状を悪化させる場合もあります。一方で、体調が回復してきた後も何年にもわたって社会との接点を持たない状態が続くと、年齢を重ねるほど再び働き始めるハードルは高くなっていきます。

さらに、親に十分な資産がある場合、「生活に困らない」という安心感が、本人の社会復帰への意欲を失わせることもあります。資産があること自体が問題なのではありません。子どもが親のお金をあてにしてしまい、本人が自立する気持ちを失うことが問題なのです。

本来であれば、体調が回復してきた段階で、「今日は買い物をお願いする」「家事を分担する」といった家庭内での役割を少しずつ増やし、生活のリズムを整えながら、短時間の仕事やボランティア、就労支援など社会との接点を段階的に広げていくことが望ましかったといえます。

金銭面でも、自分に掛かる生活費分くらいは、しっかりと払ってもらうこと。回復が見られるのにできない場合、突き放して別居させるといったことも、時には必要かもしれません。突き放すことは「冷たいこと」とは違います。本人が再び自立して社会とつながるための、「きっかけ」をつくることにもなります。