「定年後は、好きなことをして暮らそう」。大手企業で長年働き、退職金も含めて約6,000万円の老後資金を準備した男性。住宅ローンは完済、年金収入も潤沢、お金の不安はありません。しかし、退職からわずか半年後、松下さんの心には常に不満がくすぶり、なぜか満たされない日々を送るように。経済的に豊かなはずのシニアが、なぜこのような状況に陥ってしまうのか……。CFPの伊藤寛子氏が詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「お父さん、一緒にいるのが恥ずかしい」…娘の痛烈なひと言。〈資産6,000万円〉65歳元エリート部長が震撼した“自分自身の恐ろしい変化”【CFPの助言】
お金はたっぷりあるのに…満たされない日々の理由
なぜ、お金には何不自由ない松下さんが、これほど満たされない日々を送ることになったのでしょうか。
多くの人が、「老後の備え=お金の準備」と考えがちです。もちろん、生活の土台としてお金は不可欠です。しかし、老後の満足度を左右するのはお金だけではありません。
内閣府が公表した「令和7年版 高齢社会白書」によると、65歳以上の「生きがい」の感じ方には、社会活動への参加の有無で大きな開きがあることが分かっています(※)。
・何らかの社会活動に参加した人: 約85%が生きがいを感じている
・いずれの活動にも参加しなかった人: 約62%にとどまる
その差は23ポイントで、このデータが示す通り、高齢者の「生きがい」と「社会とのつながり」には、強い相関関係が見られます。
会社員の場合、現役時代は会社が自然と居場所や役割、人とのつながりを提供してくれています。ところが退職すると、それらを一気に失うことがあります。松下さんの不満も、まさにこの「社会とのつながり」が失われたことによるものでした。
