「定年後は、好きなことをして暮らそう」。大手企業で長年働き、退職金も含めて約6,000万円の老後資金を準備した男性。住宅ローンは完済、年金収入も潤沢、お金の不安はありません。しかし、退職からわずか半年後、松下さんの心には常に不満がくすぶり、なぜか満たされない日々を送るように。経済的に豊かなはずのシニアが、なぜこのような状況に陥ってしまうのか……。CFPの伊藤寛子氏が詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「お父さん、一緒にいるのが恥ずかしい」…娘の痛烈なひと言。〈資産6,000万円〉65歳元エリート部長が震撼した“自分自身の恐ろしい変化”【CFPの助言】
「お父さん、恥ずかしい」…元部長に起きた“まさかの変化”
現役時代、松下さんは、取引先で威張り散らす年配者や、店員に怒鳴る高齢者を見るたび、内心こう思っていました。
「昔の肩書をいつまでも引きずっているんだろうな」
「自分は、絶対にああいう老人にはなりたくない」
大手企業で部長職を務め、合理的な判断を重んじてきた松下さんには、自分がそんな存在になるとは想像もしていませんでした。
しかし、市役所の窓口を訪れた時のことです。若い職員の説明が少し分かりにくいと感じた松下さんは、つい強い口調で指摘しました。
「そんな説明じゃわからない。もっと丁寧に教えてくれないと」
近所のスーパーのレジや、病院の受付でも同様でした。手際が少しでも悪かったり、マニュアル通りの対応をされたりすると、「自分は軽んじられているのではないか」と感じ、口出しをせずにはいられなくなります。
本人は「正しいことを教えているだけ」のつもりでした。しかし周囲から見れば、ただの「プライドの高い、面倒な高齢者の説教」でしかありません。
松下さんの変化に最初に気付いたのは家族でした。ある日、店員に厳しく注意した後、娘からこう言われたのです。
「お父さん、最近すぐ怒るよね。一緒にいて恥ずかしい」
その瞬間、脳裏によぎったのは、かつて自分が白い目で見ていた、あの年配者たちの姿でした。
