「お父さん、恥ずかしい」…元部長に起きた“まさかの変化”

現役時代、松下さんは、取引先で威張り散らす年配者や、店員に怒鳴る高齢者を見るたび、内心こう思っていました。

「昔の肩書をいつまでも引きずっているんだろうな」
「自分は、絶対にああいう老人にはなりたくない」

大手企業で部長職を務め、合理的な判断を重んじてきた松下さんには、自分がそんな存在になるとは想像もしていませんでした。

しかし、市役所の窓口を訪れた時のことです。若い職員の説明が少し分かりにくいと感じた松下さんは、つい強い口調で指摘しました。

「そんな説明じゃわからない。もっと丁寧に教えてくれないと」

近所のスーパーのレジや、病院の受付でも同様でした。手際が少しでも悪かったり、マニュアル通りの対応をされたりすると、「自分は軽んじられているのではないか」と感じ、口出しをせずにはいられなくなります。

本人は「正しいことを教えているだけ」のつもりでした。しかし周囲から見れば、ただの「プライドの高い、面倒な高齢者の説教」でしかありません。

松下さんの変化に最初に気付いたのは家族でした。ある日、店員に厳しく注意した後、娘からこう言われたのです。

「お父さん、最近すぐ怒るよね。一緒にいて恥ずかしい」

その瞬間、脳裏によぎったのは、かつて自分が白い目で見ていた、あの年配者たちの姿でした。