大手企業で活躍、65歳元部長の老後

「今日も誰からも連絡はないか……」

都内在住の松下さん(65歳・仮名)がポツリとつぶやきました。

大手企業で部長職を務め上げた、いわゆるエリート会社員でした。真面目で仕事熱心、部下からの人望も厚く、まさに会社中心の人生を送ってきました。

「仕事さえしていれば十分」

そう考えていたため、休日は疲れを取る時間に充てることが多く、地域活動や趣味の活動に参加することはほとんどありませんでした。

資産6,000万円、勝ち組老後がスタートしたが…

いよいよ定年退職を迎えた時、手元には現役時代からの貯蓄と退職金を合わせて約6,000万円の資産がありました。都内にある持ち家のローンは完済済み。公的年金も現役時代の高収入が反映され、一般的な水準より多く受給できます。誰もが羨む「老後の勝ち組」としてのスタートでした。

「これからは好きなことをして暮らせる」

退職して最初の数ヵ月は妻と旅行に出かけたり、平日の空いているゴルフ場でプレーを楽しんだり、「これこそが現役時代に憧れていた、理想のセカンドライフだ」と満足感に浸っていました。

しかし退職から半年も経つと、毎月のカレンダーは予定のない日が続くように。会社員時代は、部下から次々に決裁を求められ、重要な会議で発言し、大きな組織を動かす中心人物でしたが、今の自分には、社会的な役割が何もありません。

「自分は、もう社会に必要とされていないんじゃないか」

そう思うようになっていった松下さんに、思わぬ変化が起きたのです。