長寿化が進む日本。年金を少しでも増やし、ゆとりある老後を目指そうと「繰下げ受給」を検討する人もいるでしょう。しかし、配偶者との死別後も繰下げを続けると、不利益を被るケースがあり、問題になっているのをご存じでしょうか。今回は、夫の死後も70歳まで年金受給を先延ばしにした山田さんの事例とともに、遺族年金と繰下げ受給に潜む「落とし穴」と、2028年から予定されている法改正について、CFPの松田聡子氏が解説します。
「え?私の年金、これだけなの?」夫に先立たれた70歳元教員、愕然。5年繰下げれば〈月28万円〉になると信じていたが…年金事務所で知った「衝撃の事実」【2028年の法改正についてCFPが解説】
2028年4月から遺族厚生年金と老齢厚生年金の関係が変わる
久子さんのような「遺族年金受給権があるだけで繰下げができなくなる」という不条理は、長年にわたって問題視されてきました。この問題にようやく制度が応えることになります。2025年の年金法改正により、2028年4月から、遺族厚生年金の受給権がある人でも老齢年金を繰下げできる仕組みが導入されるのです(※2)。
改正後のポイントは以下のとおりです。
■老齢基礎年金(国民年金): 遺族厚生年金の請求や権利の有無にかかわらず、繰下げて増額できるようになる。
■老齢厚生年金:遺族厚生年金を請求していない場合に限り、繰下げできるようになる。
2028年4月1日以降に65歳になる人(1963年4月2日以降生まれ)が、配偶者に先立たれたとします。その際に遺族厚生年金を請求しても老齢基礎年金は繰下げできますが、老齢厚生年金は繰下げできません。遺族厚生年金を請求しなければ、老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げが可能になります。
残念ながら、すでに受給権が発生している久子さん(1956年生まれ)のような世代には適用されませんが、現在50代後半〜60代前半の方にとっては、非常に重要な変化といえるでしょう。
しかし、改正後においても注意は必要です。遺族厚生年金を請求せずに老齢基礎年金と老齢厚生年金を繰下げると、その間の年金収入がないことになります。配偶者が亡くなっても繰下げを続けようと考える場合、遺族厚生年金を受給するケースも試算し、十分に検討してから最終的な方針を決めるようにしましょう。
年金は老後を支える大切な柱であるにもかかわらず、その仕組みは複雑で、一つの出来事(配偶者との死別など)が受給額に大きな影響を与える場合があります。まずはねんきん定期便で自分の年金見込み額を確認し、繰下げを検討する場合は、配偶者の状況も含めて事前に年金事務所で確認しておくことをおすすめします。
(※1)日本年金機構「年金の時効」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/shikyu/20140421-01.html
(※2)日本年金機構「年金の繰下げ受給」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
松田聡子
CFP®
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