結婚をしても夫婦の間には色々と起きるもの。世代を問わず、なかには70~80代で離婚を考える夫婦もいます。しかし、高齢での離婚は決して簡単ではありません。住まいの確保、年金収入、介護、そして子どもたちの反対.……。若い頃とは違う、生活そのものが大きく変わる問題が山積しています。 今回ご紹介するのは、地方都市で暮らす80代夫婦の事例。「このまま夫婦で最期まで一緒に」のはずが、ある日、妻が放った一言によって家族を巻き込む大騒動へと発展することに――。FPの小川洋平氏が“老年離婚”の現実を詳しく解説します。
「一緒の墓に入りたくない、別れましょう」…〈預貯金2,500万円〉結婚生活50年以上、82歳妻が突き付けた“離婚宣言”。決断は、友人の葬儀の帰り道で【CFPが解説】
離婚か我慢かではない、80代夫婦に必要な「第三の選択肢」
厚生労働省の「離婚に関する統計の概況(令和4年)」によると、2020年の離婚件数は193,253件。そのうち同居期間20年以上の夫婦による離婚は約3万9,000件にのぼり、長年連れ添った夫婦が離婚を選択するケースは決して少なくありません。
また、70代、80代になってから離婚を選択する夫婦も存在します。「このまま夫婦として人生を終えたくない」「残された時間だけは自分らしく生きたい」。そうした思いが、人生の終盤に離婚を決断させることもあるのです。
ただし、高齢者の離婚は若い世代の離婚とは大きく事情が異なります。預貯金や不動産などの資産をどう分けるのか、また婚姻期間中の厚生年金については年金分割の対象となる場合もあります。高齢期の離婚では、こうした財産面の整理が大きな課題となります。
さらに、老後の生活の真っただ中で離婚協議や調停に発展すれば、若い頃の離婚以上に現実的な問題が重くのしかかります。資産を取り崩しながら生活しているケースも多く、時間や費用の負担は決して小さくありません。また、弁護士に依頼すれば、数十万円単位の費用が発生することも珍しくありません。
そのため、高齢期の夫婦には「離婚か我慢か」という二択ではなく、“第三の選択肢”を考えることも重要です。
生活費を整理し、それぞれが別々の場所で暮らしてみることが、まず一つの選択肢です。あるいは、家庭内別居として、お互いに独立した生活を試してみるのもよいでしょう。
また、今後、介護施設への入居が必要になる可能性を考えれば、早い段階からサービス付き高齢者向け住宅などで生活してみたり、要支援状態でも入居可能な施設などを検討するのも一案です。また、「どうしても一緒のお墓は嫌」なのであれば、子どもと相談して墓は夫婦別々にするという方法もあります。
感情的になることは仕方のないことですが、感情面だけでなく金銭面で争っても、嫌な思いを抱えたまま最期を迎えることになってしまう可能性もあります。お互い、残りの人生を自分のために生きるために、何を許せないと思っているのか冷静に言語化し、それに対応する方法を見つけるなど、話し合うことで離婚以外の選択肢が見えてくることもあります。
そして、いずれにしても必要なのは資金計画です。年金はいくら受け取れるのか、預貯金で何年生活できるのか、介護費用はどれくらい見込むべきなのか。感情だけではなく、こういったお金の面からも現実的な選択肢を整理し、お互いが納得できる結論を探すことが重要です。
