シニアにも広がるAI、使い方次第で「毒にも薬にもなる」

高齢者はお金と健康、そして孤独の不安を抱えやすいというデータがあります(※2)。そうした中でも、シニアのAI活用は着実に広がっています(※3)。24時間いつでも利用でき、気兼ねなく悩みを打ち明けられる相談相手としての魅力も大きく、今後さらに利用は広がっていくと考えられます。

ただ、注意すべき点もあります。私たちが慣れ親しんだコンピューターは、融通は利かないけれど客観的な正解を返す存在でした。電卓に「1+1」と入力すれば必ず「2」。主観や気分は入りません。

ところが今のAIは、まったく別の仕組みで動いています。膨大なデータから言葉のつながりを学び、「次に来そうな言葉」を確率的に生成するのです。利用者の考えや感情に引きずられ、その判断を補強するような回答を返してしまうことや、時には事実でないことを断言する、いわゆる「ハルシネーション」を起こすこともあります。

鍵となるのが、「問いかけ方」です。同じAIに何度も「この投資は正しい?」と聞けば肯定し、「リスクを教えて」と聞けば不安材料を並べます。同じテーマでも、問い方によって強調されるポイントは大きく変わります。

野際さんの問いかけは、「逃げたい」という不安に満ちていました。AIはそれに調子を合わせ、「合理的です」という"おべっか"を返しただけでした。この“おべっか”はシコファンシーと呼ばれ、AIが対話相手の意見や気分に調子を合わせ、相手が望む答えを返してしまう傾向のことです。

野際さんは、いつも無意識ながら背中を押してほしい気持ちから「シコファンシー」を誘発するような聞き方をしていたのです。気持ちよく賛成してくれる相手とのやり取りは心地よいものでしょう。しかし、AIは「考えを整理する道具」であって「判断を委ねる相手」ではありません。投資判断では、それが命取りになることもあるのです。