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「仕事一筋」だった男、65歳で完全引退
「まさか、自分の家がこんなに居心地の悪い場所になるとは思ってもみませんでした」
65歳で完全にリタイアを迎えた都内在住の佐藤和彦さん(仮名)。佐藤さんは大学卒業後、大手情報関連会社で働き、60歳定年後は関連会社に出向。年金の受け取りを始める65歳で会社を去る決断をしました。現役時代は平日の帰宅が深夜になることも多く、週末もクライアントとゴルフに出かけるなど、家を空けがちだったといいます。
「男は家族を養うために仕事、仕事、仕事。その代わり、家事や育児はすべて妻に任せる。昔は、それが普通でしたよね」
佐藤さんが現役時代、家庭を顧みなかったツケは、退職と同時に一気に噴き出すことになります。
「俺の飯は?」その一言が招いた妻の冷徹な視線
佐藤さんの退職後、生活のリズムは一変しました。特に困惑したのが、3歳年下の妻・美由紀さん(62歳・仮名)との距離感です。美由紀さんは数年前から近所のスーパーで週に4日、パートタイマーとして働いています。
ある日のお昼前、パートへ出かけようとする美由紀さんの背中に向かって、佐藤さんは無意識にこう声をかけました。
「俺、飯はどうしたらいいんだ?」
その瞬間、美由紀さんは足を止め、振り返りもせずに「冷蔵庫に残り物があるから、勝手に温めて食べて」と言い残し、家を出て行ったといいます。
「何かおかしなことを言ったでしょうか? 結婚以来、食事を用意するのは妻の役目だった。私が仕事を辞めたあと、家のことはどうするか、話もしていません。私は当然のことを聞いただけなんです」
以降、佐藤さんと妻は、必要最低限の会話しかなくなったといいます。しかし、佐藤さんの話を聞いていくと、以前から必要最低限のコミュニケーションしかしてこなかった様子が窺えます。仕事を完全に辞めたあと、家での立ち居振る舞い方がわからず、まさに「完全な迷子」状態に陥っているようでした。