(※写真はイメージです/PIXTA)
「建築費は全額出す」「完全分離にするから」…親側の譲歩が強要に変わるまで
「まさか、あの子からあんな言葉をぶつけられるなんて、今でも信じられないんです」
都内に住む遠藤清高さん(74歳・仮名)は、現在の心境をこのように話します。清高さんは中堅メーカーで定年まで働き、現在は妻の和子さん(71歳・仮名)の分と合わせて月に約25万円の年金を手に暮らしています。現役時代の貯蓄も5,000万円ほどあり、老後の資金繰りに特段の不安はありませんでした。経済的には平穏な生活を送っていた高齢夫婦ですが、家族関係は良くないといいます。
事の発端は、2年前に娘の聡美さん(32歳・仮名)の夫が、住宅の購入を検討し始めたことでした。遠藤さん夫婦にとって、聡美さんは唯一の子どもです。清高さんと和子さんは、かねてより老後は娘夫婦と一緒に暮らしたいという希望を持っていました。
娘夫婦から住宅購入の計画を聞いた清高さんは、「今住んでいる実家を建て替えて、二世帯住宅にする。建築費は自分たちが全額負担する」と申し出ました。娘夫婦にローンの負担を一切負わせないという、親としての大きな支援のつもりでした。
当初、娘夫婦は「自分たちだけの生活基盤を作りたい」という理由でこの申し出を断り、マンションを探し始めました。しかし、清高さんと和子さんは諦めませんでした。娘夫婦が首を縦に振るよう、次々と妥協案を提示したといいます。
和子さんは当時の行動について、次のように振り返ります。
「玄関も水回りもすべて別々にする『完全分離型』にするからプライバシーは守られる、生活費も浮く、と説得を続けました」
清高さんもまた、「親の土地と財産を受け継ぐのだから、同居するのが当然だ」「資金をすべて出してやるのだから、少しは親の言うことを聞くべきだ」という趣旨の言葉を、電話やLINEで何度も送り続けました。善意で提案した全面的な資金支援と配慮の数々は、いつしか同居を承諾させるための手段へと変わっていきました。
夜中に届いた一通のLINE。親の資金を拒絶し、別の場所に家を買った娘
娘夫婦からの返信は徐々に遅くなり、やがて訪問を拒まれるようになりましたが、遠藤さん夫婦は「家族なんだから、大事にはならないだろう。そのうち、折れるはず」と楽観視していました。しかし、ある日の夜、清高さんのスマートフォンに聡美さんから一通のLINEが届きました。そこには、拒絶だけが綴られていました。
「お金は1円も出してもらいたくない」
「自分たちの力で何とかする」
「お願いだから、しばらく私たちの生活に関わらないで」
「しばらく連絡もしてこないで」
それ以来、電話もLINEも拒否され、最終的に娘夫婦は自分たちで調達できる資金の範囲で別の場所にマンションを購入し、すでに転居しているといいます。