老後を見据え、郊外の一戸建てから利便性の高い駅前に移り住むシニアは珍しくありません。一見すると管理の手間が省ける理想の選択に見えますが、住まいの環境を大きく変える決断には思わぬ落とし穴が潜むものです。一念発起して駅前へ引っ越した夫婦の事例から、わずか1ヵ月で生じた誤算の真相を見ていきます。
「もう広い家も庭も、必要ないよな」〈年金月30万円〉60代夫婦が「庭付き一戸建て」を捨て「駅前2LDK」に住み替え…1ヵ月後には後悔を口にした理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

子育て終了で「無駄に広い家」に

「広い家も広い庭も、もう私たちには必要なかったな、と最初は喜んでいたんです。駅は近いですし、買い物も本当に便利になりましたから。 でも、引っ越してわずか1ヵ月も経たないうちに、別の後悔でいっぱいになりました」

 

そう話すのは、神奈川県内の郊外にあった一戸建てを売却し、駅前の分譲マンションに引っ越した高橋恵子さん(67歳・仮名)。 夫の正雄さん(67歳・仮名)は4年前に定年退職し、現在は夫婦二人、月約30万円の年金を受給しながら生活しています。

 

以前暮らしていた郊外の4LDK一戸建ては、子どもたちが独立した後は部屋が余り、広い庭の手入れも重荷になっていました。

 

「ちょうどリフォームを考えるタイミングで。減築をするか、いっそのこと引っ越すか。 そう考えたときに『老後は便利な駅前に限る』と、一念発起して自宅を売却。駅徒歩3分の2LDKの分譲マンション(専有面積約55平米)を買うことにしたんです」

新居を埋め尽くした「捨てられない思い出」

すべてが計画通りに進んだはずの住み替えでしたが、新居に移ってから1ヵ月が経過した高橋さんの自宅には、一戸建て時代の荷物が片付かずに残されていました。

 

「かなり捨てたつもりだったのですが、30年以上暮らした家の荷物は想像以上でした。子どもたちのアルバムや主人の本など、どうしても捨てられないものが次々と出てきてしまって」

 

新居の2LDKは、リビングのほかに寝室と、正雄さんの書斎兼物置となる小部屋が一つです。 一戸建て時代の家具や荷物を無理に詰め込んだ結果、現在も段ボールが一部残ったままで、生活動線が狭くなってしまいました。

 

さらに、住空間が縮小したことで、夫婦間の物理的な距離感にも変化が生じることになります。

 

「一戸建ての時はお互いが別々の部屋にいて心地よい距離がありました。 しかし今はどこにいてもお互いのテレビの音や話し声が聞こえるので、小さなストレスが積み重なるようになりました」

 

郊外の不便さから逃れた結果、今度は住居の狭さによるストレスに直面することになったのです。