(※写真はイメージです/PIXTA)
月8万円のアルバイトで見つけた、お金に代えがたい「やりがい」
実際に大学での業務を始めてみると、マサキさんの生活は変わりました。朝、正門に立っていると、登校してくる学生たちが挨拶をしてくれます。道に迷っている受験生や保護者を案内し、「ありがとうございます」と感謝されることも日常茶飯事です。
若者たちの活気に触れながら、自分が社会の一部として機能しているという実感が、退屈だった毎日に心地よいメリハリをもたらしてくれました。
稼いだアルバイト代は、週末に妻と行くちょっと豪華なランチ代、孫たちへのランドセル代、お祝いのプレゼント代などに、気兼ねなく使っているといいます。
十分な老後資金があるからこそ、目先の生活費に縛られず、「やりがい」だけを求めて働くことができる。マサキさんの充実した表情は、お金だけでは決して手にできない「社会における自分の居場所」の大切さを物語っています。
なぜ経済的にゆとりのあるシニアほど「働く満足度」が高いのか?
マサキさんのように、十分な老後資金がありながら働きに出るという選択は、データから見ても「人生の満足度を高める合理的な行動」であると推測できます。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、60歳以上が収入を伴う仕事をしている主な理由として、全体では「収入のため」が55.1%と半数以上を占めますが、マサキさんのような金融資産「5,000万円以上」に限ると、39.4%に低下しています。このことから、お金に余裕がある層ほど、生活費以外の目的(やりがいや健康、社会とのつながりなど)を求めて働く実態がうかがえます。
さらに注目すべきは、経済的な余裕が「仕事の満足度」に直結しているというデータです。同調査において、現在の仕事に「満足している(満足している+やや満足している)」と答えた割合は全体で60.4%ですが、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」層では84.2%に増加しています。生活費のために仕事を我慢して続ける必要がなく、マサキさんのように「やりがいを感じられる仕事」を選べることが、この高い満足度を生み出していると推測できます。
完全リタイアによる「毎日が日曜日」は一見すると羨ましく思えますが、社会との接点や役割を失い、孤独感を深めてしまう側面もあります。お金の心配がないからこそ、目先の収入に縛られずに「自分の居場所と役割」を再構築し、生きがいを手に入れたマサキさんの選択は、豊かな老後を送るための一つの正解を示唆しているといえるでしょう。
[参考資料]
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」