(※写真はイメージです/PIXTA)
予定外の訪問で見えたもの
「電話ではいつも『元気にやっている』『何も変わったことはない』と笑って言っていたので……あの日、たまたま実家に寄らなければ、分かりませんでした」
都内の企業に勤務する佐藤健太さん(54歳・仮名)は、東北にある実家の異変に気づいた当時の状況を振り返ります。
地方都市で暮らす82歳の母・和子さん(仮名)とは、月に2回ほど電話で近況を話し合っていました。佐藤さんの父親は5年前に他界しており、それ以来、和子さんは一人で暮らしています。佐藤さんが実際に帰省するのは例年、盆と正月の年2回のみで、年によっては1回になることもあったといいます。
しかしある日、地元に出張で来たとき、泊まりがけになったので、「ついでに実家に顔を出そう」と考え、「近くまで来たから今から寄るよ」と直前に電話。アポなしに近い形で実家へ立ち寄りました。何気ない行動の先に待っていたのは――。
万一のときのために持っていた実家のカギで玄関を開けた瞬間、室内の冷気と、何ともいえない嫌な臭気に気づきます。当日は早春とはいえ肌寒い日。ストーブをつけずにはいられないような気温でしたが、和子さんは寝室から布団を持ってきたのでしょう、頭からかぶりダイニングテーブルに座っていました。
テーブルの上には、いつ買ったか分からないような食パンの袋が置かれていました。その表面は青緑色のカビで覆われていましたが、食べた形跡があります。「お母さん……」と話しかけると、和子さんはうつろな表情で呟きました。
「あれ、来るのは今日だったか」
さらに部屋の隅を見渡すと、未開封の督促状や空になったレトルト食品の容器、新聞紙が天井近くまで積み上がっています。きっとこのままの状態でいると、“ごみ屋敷”になるのだろう――そのような状況に、佐藤さんは言葉が出てこず、ただ茫然としてしまったといいます。