(※写真はイメージです/PIXTA)
夫の感情・妻の理論…老後に向き合って生まれた「夫婦の絆」
しかし、エクセルの数字を冷静に見返すと、ユリコさんの主張が「夫婦の未来を守るための切実な思い」から来ていることに気づきました。
「自分が倒れたとき、妻に金銭的な苦労をかけるわけにはいかない」と、マサシさんはユリコさんの現実的な資金計画を素直に受け入れました。
退職金は決して夫だけが自由に使えるものではなく、夫婦が老後を過ごすための共有財産です。これを機に、2人は改めて今後の生活費や、本当に必要なお金の使い方について真剣に話し合いました。
マサシさんは今、自分の夢を諦めた悲壮感ではなく、ユリコさんと現実的な未来を共有できた安心感とともに、新たな人生のスタートを切っています。
貯蓄3,400万円あっても油断禁物?…データで見る「シニアの不安」
退職金という数千万円単位の現金を一気に手にすると気が大きくなり、マサシさんのように「これくらいは使ってもいいだろう」と散財してしまうシニアは少なくありません。自身の資産を客観的に把握し、パートナーと計画を共有することは理にかなった行動といえるでしょう。
マサシさんが持つ「3,400万円」という金融資産は、データから見ても恵まれた水準にあると推測できます。内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、今後の生活のために必要だと思う金融資産額の平均は「2,648万円」となっています。
また、同調査でマサシさんと同じ「金融資産3,000〜5,000万円未満」の層に対し、現在の貯蓄額が十分かを尋ねたところ、「足りない」と答えた人はわずか23.0%にとどまっています。つまり、3,400万円という資産額は、本来であれば約8割の人が「これで十分だ」と安心できる水準であるといい換えられます。
では、なぜユリコさんは十分な資産があるはずなのに、釘を刺す必要があったのでしょうか。それは、同調査における経済的な面の不安として、「物価が上昇すること(74.5%)」がトップに挙げられていることと無関係ではないでしょう。長生きに伴う出費の増加だけでなく、将来的に物価が上がっていくことで「今あるお金の価値が目減りしていくこと」を危惧していたのです。
いくら十分な老後資産があったとしても、将来の生活費がどれだけ膨らむかは予測できません。だからこそ、退職金が入ったからといって最初に一気に散財するのではなく、ユリコさんのように老後の計画を視覚化し、夫婦で確認しておくことが重要です。そうすることで、むやみに将来を悲観することなく、安心かつ心豊かに資産を使っていけるのだと、この事例とデータは示唆しているといえるでしょう。
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」
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