(※写真はイメージです/PIXTA)
娘宛ての「赤い封筒」
その封筒は、日本年金機構から届きました。宛名は娘のアカリさん。しかし、アカリさんは5年前に上京し、いまは東京に住んでいるはずです。
「お父さん、これ……『特別催告状』って書いてある……」
通常、年金機構からの通知はハガキや青・白の封筒が一般的です。しかし、この「赤い封筒」は、度重なる督促を無視し続けた場合に届く、「最終警告」を意味するものでした。
「別世帯の娘」の通知が実家に届いたワケ
アカリさんは東京で独立し、住民票も移しているはず。それなのに、なぜ地方の実家に、しかも差し押さえ寸前を意味する赤い封筒が届いたのでしょうか。そこには、アカリさんが抱えていた嘘と、年金機構の追跡能力があります。
アカリさんは上京後、一度は住民票を東京に移しました。しかし、2年前に会社を退職し、フリーランス(実態は不安定なギグワーク)に転身した際、家賃を抑えるために都内を転々と引っ越していました。その際、「新住所への住民票の移動」を怠っていたのです。
年金機構は、住民票上の住所(東京の以前の住まい)に通知を送りますが、宛先不明で返送されます。すると年金機構は、「実家(以前の登録住所)」や「本籍地」を調査し、確実に本人やその家族に接触できる可能性が高い場所へ、重要書類を送付する「居住確認調査」というステップを踏みます。
特に「赤い封筒(特別催告状)」は、将来的な資産差し押さえを視野に入れた法的準備の一環であるため、機構はあらゆる手段を使って現住所を突き止め、最終的に「最も確実な連絡先」である実家へ送り届けたのです。
上京した娘の本当の姿
サナエさんが慌ててアカリさんに電話をかけると、彼女は真実を告白しました。
「ごめんなさい……。3年前に会社を辞めてから、国民年金が払えなくなっていたの。お母さんには知られたくなかった……。前の会社、お母さんもお父さんも自慢に思っていたから辞めたことをいえなくて……。東京での生活費が苦しくて、住民票を移すと保険料の督促が来るのが怖くて、ずっと放置していたの」
アカリさんが滞納していた期間は12ヵ月。未納額は以下のとおりです。
わずか20万円。しかし、それを放置し、親に心配を掛けまいと連絡を断っていたことが、事態を「赤い封筒」まで悪化させてしまいました。