メディアでもたびたび取り上げられてきた「老後2,000万円」問題。とはいえ目標額を達成して老後を迎えても、その貯蓄を完全に使い切ることができる人はほとんどいないと、企業年金制度と投資教育を専門として活動しているFPの山崎俊輔氏はいいます。そこで本稿では、山崎氏による著書『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集し、「老後2,000万円」のイメージが時代遅れとなっている理由と、これからの世代が「老後4,000万円」をイメージしておくべき理由について解説します。
預金残高ゼロが怖くて「15万円の旅行」すら楽しめない…〈老後2,000万円〉のイメージが“時代遅れ”なワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

データが示す日本人の“スローすぎる”取り崩しペース

できるだけお金を使い切って最期の日を迎えようというメッセージでベストセラーとなった『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)ではアメリカの研究結果として、

 

●資産額が多い人々(退職前に50万ドル以上)は、20年後または死亡するまでにその金額の11.8%しか使っておらず、資産の88%以上を残して亡くなっている

 

●資産額が少ない人々(退職前に20万ドル未満)であっても、退職後の18年間で資産の4分の1しか減っていない

 

●全退職者の3分の1は、むしろ退職後に資産を増やしている

 

というデータを紹介しています。老後に使うための資産形成であったはずが、実際にはほとんど取り崩されていないのです。

 

出典:『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より抜粋
[図表]「老後ぴったり2000万円」では安心じゃない 出典:『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より抜粋

 

国内データでも、経済財政白書(令和6年)等をみると、高齢者世帯が「お金を残す」傾向が強いことは明らかです。60歳代、70歳代、80歳代以降で区分けして資産額を比較したところ、年齢に応じて資産が減っていく傾向は認められますが、減り具合はわずかです。

 

60歳代の平均金融資産額が1895.9万円のところ、70歳代の平均額が1734.2万円とわずか150万円くらいしか減少していません。80歳代以降の平均も1619.4万円ですから、こちらも120万円ほどの減少しかありません(総務省「全国家計構造調査(2019年)」)。

 

この数字をそのまま読み解けば、「取り崩しはほとんどしていない」「せいぜい年10万円くらい」ということになってしまうほどのスローな取り崩しです。

 

おそらくは、「1000万円くらいは残しておきたい」というイメージがあるのでしょう。

 

もちろん、このペースで取り崩しをすれば、老後のお金がゼロになる心配はありません。「公的年金収入で、日常生活費も、教養・娯楽費と交際費もやりくりしちゃう」と決めてしまえば、手元のお金がほとんど減ることはないわけです。

 

それで不満も不足もない、というのであればかまわないのですが、「本当はもうちょっと使って、やりたいことがある」と感じているなら、せっかく貯めたお金が活かされていないことになります。