物価には、主に「原材料費」「輸送費」「人件費」の3つの要素が反映されています。ウクライナ・ロシアの紛争拡大以降、この3つの要素すべてが高騰し続けており、商品の値上がりは現在も止まりません。こうした終わりの見えない物価高は、ゆくゆくは「老後4,000万円問題」となって私たちにのしかかると著者は語ります。本稿では、企業年金制度と投資教育を専門として活動しているFPの山崎俊輔氏による著書『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集し、日本で起きている物価上昇の原因について、具体例とともに解説します。
スーパーの値札が「1年で半分以上」差し替えられた日本の現実…物価上昇で不可避な〈老後4,000万円問題〉【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「円高になったら物価は戻るのか?」に対する残酷な現実

近年は円安の流れが定着し始めています。これもまた、円高時に想定していた輸入品目の安い価格水準は戻ってこないと考えなければなりません。

 

たとえば、スマートフォンの値段がずいぶん上がったと感じないでしょうか。その一因は為替レートにあります。iPhoneのナンバーがまだ1ケタの頃、スマートフォンが5万円もせずに手に入ったのは、携帯電話会社のキャンペーンだけではなく、円高の恩恵も大きかったのです。

 

2022年7月、Apple社は新商品の展開を待たずに、iPhoneシリーズの値上げに踏み切り、大きな話題となりました。通常なら新商品の発売にあわせ、新価格の設定が行われ、旧商品は値下げするはずが、まもなく新商品がリリースされるはずの発売済み商品、つまり古いラインナップに変わるはずの端末について、最大で19%の値上げを行ったのです。

 

これが、新商品が発売され、高機能を理由に値上げされるならまだ分かります。このときの値上げは現行機種の値上げだったことが最大の驚きでした。

 

同時期、急激な円安が起きていました。ほぼ同水準の円安シフトが短期間で起きています。2022年1月1ドルあたり115円くらいだった為替レートは、6月末までの半年でおよそ135円まで円安に一気に振れました。これがおおよそ17%の円安に相当します。21年秋頃に110円だったことを含めると、最大19%の値上げのほとんどが、そのまま価格に反映されたものとみられています。

 

「それなら円高になったら物価は戻るのか」と思われるかもしれませんが、あまり期待しないほうがいいでしょう。

 

Apple社のように、為替をダイレクトに価格に反映させる企業は実はレアケースです。多くの企業ではダイナミックに上げ下げするのではなく、一定期間は利益を減らしてでも価格を維持したりします。

 

円安移行した初期に値下げを先送りした商品については、円高に少し戻ってきてもすぐには価格を値下げしないでしょう。

 

「これからの日本は未来永劫、円安に振れ続ける」のような予言は非現実的だとしても、円高基調に入ったとき値下げがダイレクトに起こるとは考えないほうがいいと私は思います。

 

 

山崎 俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表

ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー