少子高齢化が進むなか、働き盛りの世代が親の介護を担う「ビジネスケアラー」の問題が顕在化。仕事と介護の両立に悩み、経済的・精神的な限界を迎える現役世代は少なくありません。ある44歳男性のケースを通して、介護破綻の回避策を考えていきます。
母を恨みたくないのに…〈手取り月37万円〉44歳会社員、深夜のキッチンで嗚咽した「悲しい理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

要介護3・認知症の母、介護費用月15万円の負担に息子は…

都内の中堅メーカーで課長職を務める、佐々木大貴さん(44歳・仮名)。独身で実家暮らしをしながら、手取り月収37万円で堅実な生活を送っていました。しかし、3年前から状況は一変。78歳になる母・和子さんが認知症を発症し、徐々に身体機能も低下。現在は要介護3の認定を受けています。

 

「最初は、息子として当然の務めだと思っていました。でも、終わりが見えない。出口のないトンネルをずっと走っている気分です」

 

佐々木さんの家計を激しく圧迫しているのは、月々約15万円にのぼる介護関連費用です。和子さんの受給年金は月額7万円程度。一方で、週5回のデイサービス利用、訪問介護、そして医療費や介護用おむつなどの消耗品代、さらには徘徊防止のためのリフォーム費用のローン返済を合わせると、和子さんの年金だけでは到底足りません。不足分の約8万円に加え、日々の食費や光熱費のほとんどを佐々木さんが補填しています。

 

「母の生活を維持するために、自分の将来のための貯金を取り崩す毎日です。毎月、通帳の残高が少しずつ減っていくのを見るのが、何よりも恐ろしい。自分の将来はどうなるのか……考えただけで震えます」

 

さらに深刻なのは、精神的な摩耗です。佐々木さんは仕事が終わると急いで帰宅し、夕食の準備から排泄の介助、入浴の補助に追われます。和子さんは深夜に何度も目を覚まし、「ここはどこ?」「お父さんはどこ?」と佐々木さんを揺り動かします。慢性的な睡眠不足で、仕事のミスも目立つようになりました。

 

先日、佐々木さんはついに限界を迎えました。深夜、和子さんに何度もトイレに起こされ、寝具を汚された際、ついに感情が爆発してしまったのです。

 

「『もういい加減にしてくれ!』と、母を怒鳴りつけてしまいました。母は怯えたような顔をして黙り込み……。その顔を見たら、情けなくて、申し訳なくて。キッチンに逃げ込んで、声を殺して泣きました。母を恨みたくないのに、心のどこかで『早く楽になりたい』と思ってしまう自分が嫌でたまらないんです」

 

施設に預けたら、というアドバイスもたびたび受けるも、それだけはどうしても踏ん切りがつかないといいます。

 

「女手一つで育ててくれた母を見捨てるような感じがして。それだけは、どうしても嫌なんです」

 

介護離職を検討したこともありますが、いつまで続くかわからない介護。すべてが終わったころに、再就職がかなわない可能性も高い。このままでは親子共倒れ――。そんな絶望の淵にいる感覚のなか、毎日を過ごしているといいます。

 

 

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