国税庁が発表した「令和5年分 相続税の申告実績」によれば、相続財産のうち「土地・建物」が占める割合は約4割に達し、不動産は資産承継の主役になりがちです。しかし、受け継ぐ側には想定外の試練を与えることもあるようで……。父のタワマンを相続した長男の事例から、高額な不動産相続による落とし穴をみていきます。※事例の人物名はすべて仮名です。
「あんなにドヤってたのに」3年前に父の〈8,000万円のタワマン〉を相続した36歳長男…32歳次男に「いまさらだけど後悔してる」とぼやいたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

タワマンか、現金か

兄弟の父は、一代で上場企業の役員まで上り詰めた立志伝中の人物でした。一方で、マサキさん(36歳)とユウタさん(32歳)は、父のようなハングリー精神などまったくなく、ともに中小企業に勤める平社員。年収は450万〜500万円ほどで、父の現役時代とは大きな開きがあります。

 

3年前、父の遺産分割協議で、父が住んでいたタワマン(当時の評価額で約8,000万円)と、株と預貯金(合計約5,000万円)をマサキさんとユウタさんでわけることになりました。母と父は離婚しており、相続人はマサキさんとユウタさんの2人だけ。父との別れは突然でしたが、相続財産とは別に兄弟それぞれに生命保険が掛けられていたため、納税そのものはその保険金でスムーズに済ませることができました。

 

マサキさんは「家賃もかからないし、タワマン暮らしなんて最高だろ?」と、迷わずタワマンの相続を希望しました。

 

対する弟のユウタさんは、父が遺した株と預貯金を相続することに。当時のマサキさんは、「悪いな、俺だけこんな贅沢な家をもらっちゃって」と、ユウタさんに対して勝ち誇ったような態度をみせていました。ユウタさんはあまりお金に執着がなく、「俺はこのお金でしばらくブラブラするよ。会社も辞めちゃおっかな」と特に異論はありませんでした。

毎年届く「50万円超」の納付書に震える

誤算は、相続から1年後に届いた「固定資産税・都市計画税」の通知書から始まりました。

 

「えっ、年間で50万円……?」

 

タワマン、特に高層階は資産価値が高く評価されるため、固定資産税も跳ね上がります。さらに、タワマン特有の重い負担が「管理費・修繕積立金」です。マサキさんの物件では、これらで毎月約6万円、年間で72万円が飛んでいきます。

 

固定資産税:年約50万円

管理費・修繕積立金:年約72万円

合計:年約122万円

 

月々に直せば約10万円の支出です。平社員の給料から、住宅ローンはないとはいえ、毎月10万円が「維持費」として消えていくのはあまりに過酷でした。さらに、修繕積立金の値上げが追い打ちをかけます。

 

一方で、現金を相続したユウタさんは、その資金を原資に手堅く新NISAなどで運用し、着実に資産を増やしていました。マサキさんの生活は、華やかなタワマンとは裏腹に、日々の食費を切り詰めるほど窮屈なものになっていたのです。