高年齢者雇用安定法により、60歳以降に会社に勤め続けることは可能になりました。しかし、定年の延長でそれまでと変わらない待遇が保証されているケースは、まだまだ少数派といえます。処遇の変更に納得できず、長年勤めた会社を辞めてしまう人も少なくありません。本記事では、CFPの松田聡子氏が、勤務先による定年後の待遇にプライドを傷つけられた60歳の元工場長の事例をもとに、「60歳の壁」の乗り越え方を解説します。
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「俺の30年は何だったんだ」…屈辱の〈年収4割減〉に退職届を叩きつけた60歳工場長。失業給付が切れる前、追い詰めながら決めた「まさかの再就職先」【CFPの助言】
退職届を提出したが…再就職の厳しい現実
「もう少し冷静に考えてから」と引き留める章江さんの言葉も耳に入らないまま、和夫さんは退職届を提出しました。退職金は1,500万円。「多少の収入減少を受け入れれば、次は見つかるだろう」と考えていました。
しかし予想に反し、現実は厳しいものでした。シニア向け転職エージェント2社に登録し、製造管理系・年収450万円以上を希望条件に活動を開始しましたが、面接まで進む求人案件がほとんどありません。
自己都合退職のため、7日間の待機期間に加えて1ヵ月の給付制限を経てようやく失業給付の受給が始まりましたが、給付日数には限りがあります。完全にリタイアするまで、退職金には手をつけたくありません。
ついに失業給付がなくなる頃、精神的に追い詰められた和夫さんは、警備会社への再就職を決めました。その年収は約320万円です。
「あのまま倉庫にいれば、少なくとも400万円はもらえていた。なぜあのとき辞めてしまったのか……」
和夫さんは後悔しましたが、「時すでに遅し」でした。
