住宅価格の高騰が続く現在、限られた予算で希望する広さを確保するために、都心から離れた郊外に住宅を購入する選択肢があります。しかし、購入当時に最善と判断した決断が、時間の経過とともに家計の圧迫や生活環境の変化を招くケースは少なくありません。ある男性のケースから住宅購入における長期的な視点の重要性と、選択に伴うリスクをみていきます。
念願の「100平米の庭付き一戸建て」が一転…月収40万円・38歳の悲劇。先輩の一言で気づいた“通えない家”の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

先輩との雑談で崩れる「理想の家での幸せ」

「都心で探すと、この予算では50平米以下の戸建てじゃないと無理だって。家族3人暮らすには、難しいなと思って……」

 

都内メーカーで働く高橋健一さん(38歳・仮名)は、住宅購入を検討した際の心境を振り返ります。月収は40万円。当初は利便性を重視し、職場に近い23区内を希望していましたが、高騰する不動産価格を前に、希望する「広さ」と「立地」の両立は不可能でした。

 

「せっかく家を買うなら、子ども部屋はほしいし、リビングも15畳はほしい。買える場所、買える場所と、路線図を外側に辿っていくしかなかったんです」

 

最終的に高橋さんが選んだのは、神奈川県西部の郊外に立つ新築一戸建てでした。100平米超の4LDKで、比較的広い庭も付いています。職場までの通勤時間は片道1時間40分。毎朝6時半に家を出る生活ですが、念願の広いマイホームを手に入れた満足感で、当時は疲れも感じなかったといいます。

 

しかし、その満足感は、職場の先輩との雑談で一変します。同じように15年前、郊外に家を買った50代の先輩が、ため息をつきながらこう漏らしたのです。

 

「うちも当時は広さにこだわって遠くに買った。でも、息子が都内の大学に受かったら、通学に往復4時間以上かかるからって、結局一人暮らしをすることになってね。中途半端に遠いせいで、自宅から通わせるのが酷なんだよ。住宅ローンに加えて、毎月10万円の仕送りと家賃。それだけで毎月18万円の出費。もちろん学費は別。家計はもう限界だよ。せっかくの広い子ども部屋も、今は物置だ」

 

その話を聞いた瞬間、高橋さんは背筋が凍るような感覚に陥ったといいます。

 

「自分の15年後を突きつけられた気がしました。今は子どもが小さいから広い家が快適ですが、将来、大学進学となったときには、この立地がデメリットになる。先輩みたいに東京の大学に進学となったら、通学は厳しいと思うんですよね。夫婦二人だけが暮らす広い家を守るために、1時間40分かけて通勤し続ける自分を想像して、ゾッとしたんです」

 

果たして、この広い家から得られる満足感は、15年後も続いているだろうか――。自身の選択が正解だったのか、わからなくなったと彼は語ります。