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要介護の義母、高級老人ホーム入居は正解だったのか?
都内のIT企業で働く佐藤美智子さん(42歳・仮名)。夫と小学生の息子の3人で暮らしています。世帯年収は1500万円を超えており、経済的に余裕のある生活を送ってきました。
一方、地方の平屋で一人暮らしをしていた義母の佐藤節子(享年78歳・仮名)さんは、自身の年金と遺族年金を合わせ、月15万円を生活の糧にしていたそうです。
節子さんが膝を悪くし、日常生活に支障が出始めた際、美智子さんの行動は迅速でした。地方の古い家で不自由な思いをさせるのは忍びないと考え、都内でも評判の良い、入居一時金が数百万円、月額費用も30万円を超える高級有料老人ホームへの入居を手配。費用の不足分はすべて佐藤さん夫婦が負担しました。
「お義母さんが入居する際に持ち込もうとしていた家具や家電は、長年使った古いものだったので、すべて最新のものを新調しました」
親戚や知人からは「あんなに手厚い施設に入れてあげるなんて、本当に親孝行だ」と感心されたといいます。美智子さん自身、義母に最高の環境を提供できたと自負していました。一方で節子さんが施設で口数が少なくなったことも「慣れない環境への戸惑いだろう」と楽観視していたのです。
転機は、入居から1年が経とうとしていたころの節子さんの急逝でした。遺品整理のため施設を訪れた美智子さんは、居室の片隅に残された一冊の手帳を見つけます。
「それは1行日記のようなもので、地元で暮らしていたころの献立や、近所の方と交わした会話の内容など、何気ない日常が細かく記されていました。15万円の年金でスーパーの特売を楽しみ、自分の手で家事をしていた日々の記録です。反対に、ホームでの生活については、一行も記述がありませんでした」
ホームでの暮らしは、設備も整い快適なものだったはずです。買いものに困らぬよう、不足分の費用とは別に毎月3万円の仕送りもしていました。掃除や洗濯、食事の用意まで、何もする必要はなく、常に”ゲスト”として過ごせます。しかし、そのような暮らしについて、手帳には何の記述もありません。
「お義母さんのことを思って呼び寄せ、無理をしてでも高級な施設を用意しました。しかしここでの暮らしは、本当は嫌だったのかもしれない。世間から『立派な最期を迎えさせた』と褒められるたびに、自分は傲慢だったのではないかと、やりきれない思いになります」
今となっては、節子さんの真意はわかりません。美智子さんは、正解のない後悔を抱え続けています。
