(※写真はイメージです/PIXTA)
「就労収入+年金」がもたらす老後の余裕
総務省『労働力調査』によると、2024年時点、65歳以上の就業率は25.7%、75歳以上では12.0%。65~69歳では53.6%と、半数以上が働いています。一方で、厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の繰下げ受給状況(特別支給の受給権者を除く)は、2024年度で全体の1.9%、数にして54万8,635人です。5年間で0.9%、約20万人弱増えているものの、圧倒的多数が松本さんのように「65歳受給」という標準的な道を選んでいます。
60代後半の人が働いているにも関わらず、「65歳からの年金受給」を選択している理由。そこには何があるのでしょうか。
繰下げ受給は年金額を増やせる反面、いくつかの注意点があります。まず「税金と社会保険料の負担増」。年金額が増えると所得税や住民税が高くなるだけでなく、国民健康保険料や介護保険料も連動して上昇するため、額面ほど手取り額は増えません。
次に「受給期間の不確実性」。増額分で「元を取る」には、一般的に受給開始から12年前後の生存が必要です。また、遺族年金には繰下げによる増額が反映されないため、自身の長生きに特化した制度であるという側面もあります。
このような注意点を考慮すると、将来の年金増額よりも通常通りの受給のほうが、メリットが大きいといえるケースも多いようです。
また、将来の増額よりも今の生活が優先という高齢者の実態もあるでしょう。内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、「現在の貯蓄額は生活の備えとして十分か」という問いに対し、「足りない(少し足りない・かなり足りないの合計)」と回答した人は57.1%に上ります。
多くの高齢者が不安の中にいる状況下、できるだけ早く年金を受け取り、生活を安定させたいと考えるのは当然といえそうです。
年金を繰下げるべきか、それとも65歳で受け取るべきか。そこに唯一の正解はありません。松本さんのように、家計にゆとりを生み出すために受け取るというのも、立派な選択肢の一つです。一度受け取る選択をすると後戻りはできないため、自身の状況に照らして熟考することが大切です。
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