老後の生活には一体いくら必要なのか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2025年度)」によれば、夫婦2人で「ゆとりある老後生活」を送るための費用は月額約39万円とされています。この資金を準備するために、日々の生活を切り詰め、楽しみを後回しにしている人も少なくありません。しかし、いくらお金を増やせたとしても、失われた「時間」と「健康」だけは、どんな大金でも買い戻すことは不可能です。貯金ゼロから10年で1億円の資産を築いた投資家・たけ氏は、40年以上勤め上げ、完璧な老後の準備を整えながらも、夢を絶たれた父の姿を目の当たりにしました。本記事では、同氏の著書『月1万円からの損しないはじめかた 新NISAでお金を増やしましょう』(KADOKAWA)より、著者が自身の父の経験を通じて学んだ、今の楽しみに投資をすることの重要性を説きます。
「俺の金は全部使い切る」と豪語した上場企業役員の父。千葉に別荘を買い、船舶免許まで取ったのに…定年を待たずして崩れた“老後の夢”と、息子が悟った「人生の教訓」 (※写真はイメージです/PIXTA)

あんなに準備をしてきたのに…」老後を楽しめなくなってしまった父

実は、僕が「今」を大切にしてほしいと言うのには、個人的な理由があります。これは僕の父の話です。

 

父は地方の国立大学を卒業後、誰もが知る超一流企業に入社しそれからずっと同じ会社に40年以上勤めました。父は決して裕福な家庭で生まれたわけではないですが、一生懸命働きカネなしコネなしの状態から上場企業の取締役までいきました。「老後の楽しみのために」と60歳を過ぎてから、千葉の海沿いに別荘を買いました。さらに船を買って船舶免許を取って老後に釣りを楽しむための準備をしていました。

 

土日は大型バイクに乗って千葉に行ったり、家でうどんを打ちはじめたりと精力的に動いていました。父は僕や兄に「これまで貯めたお金は全部使いきるから君たちに渡すことはない。自分の将来のことは自分でなんとかしなさい」と言っていました。

 

そしてあと数年で定年退職を迎えるというタイミングで、父が倒れたと母から電話がきました。僕は急いで病院に駆けつけました。医者からは「くも膜下出血」で3分の1の確率で亡くなり、3分の1の確率で重度の後遺症(半身不随など)が残る可能性があるとのことでした。

 

無事に手術は成功しましたが、父は自力で歩くことが困難になり、脳にも障害が残ったため短期的な記憶ができなくなりました。同じ質問を1分後に繰り返すなど、過去の記憶が飛び飛びになりました。そもそも新しいことをやることに対する意欲が全くなくなっていました。あれだけ好きだった大型バイクや船、海沿いの家も全部売ることになり、定年後に楽しむことができなくなりました。

 

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