老後の安定した収入源となる公的年金ですが、受け取り時期を遅らせる「繰下げ受給」には、常に「元が取れるか」という損得論がつきまといます。 そんな現役世代の論争に対して、当の本人たちはどのように考えているのでしょうか。 ある女性のケースから、長寿社会における年金の役割を考えていきます。
「月30万円もらえるはずでは?」65歳元会社員、年金事務所で思わず身を乗り出す…「年約40万円」の年金が消えた理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

知っておきたい「加給年金」の落とし穴と共働き世帯の注意点

佐藤さんの事例で発生した「加給年金の不支給」は、昨今の社会保険適用拡大に伴い、多くの共働き世帯やパート勤務世帯が直面するかもしれない問題です。

 

加給年金とは、厚生年金の被保険者期間が20年(240ヵ月)以上ある人が65歳に達した際、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に加算される制度です。令和6年度の支給額は、配偶者の特別加算を含めると年額39万7,500円にのぼります。

 

しかし、日本年金機構の規定により、配偶者自身が厚生年金に20年以上加入し、老齢厚生年金を受ける権利がある場合、この加給年金は全額支給停止となります。良子さんの加入期間が「242ヵ月」であったことが、年間約40万円の受給を阻む分岐点となりました。

 

総務省「労働力調査」によると、共働き世帯は1,278万世帯に達し、専業主婦世帯517万世帯のおよそ2.5倍となっています。また、短時間労働者への社会保険適用拡大が進み、2024年10月からは従業員数51人以上の企業まで対象が広がりました。

 

今回の問題を未然に防ぐには、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」の見るべきポイント、(1)これまでの加入期間・保険料累計、(2)将来の年金見込額、(3)直近の納付状況の記録、の3点をおさえることが重要です。特に過去の未払いがないか、記録に間違いがないかを確認しましょう。少々の誤差でも想像以上の影響を与える老後。しっかりとしたシミュレーションのもと、資金計画を立てていくことが大切です。