気づけば資産は半分に―孫のいないご近所さんとの会話でよぎった感情

正一さんは60歳で定年退職しました。そのときの金融資産は約3,000万円。夫婦二人なら十分だと思っていました。しかし、退職から約12年。通帳の残高は、いつの間にか1,500万円ほどに減っていました。

もちろん減った理由は生活費の取り崩しもあります。しかし、節目ごとに渡してきた孫へのお祝い金の影響も決して小さくありません。年金は夫婦合わせて月18万円ほど。生活はできていますが、夫婦ともに、あと10年、20年生きる可能性を考えると、資産が減っていくのを見るのは大きなストレスでした。

そんなある日、同年代のご近所さんと立ち話をしていたときのことです。

「うちは孫がいないんだ。静かで楽だけど、寂しいよ。山上さんが羨ましい」

そう言われても、正一さんは素直に受け止めることができなくなっていました。孫がいることで、自分たちの老後が脅かされている現実。「逆に羨ましい部分もある。いっそ孫がいなければ、こんな心配もしなくて済むのかもしれない」――そんな考えが一瞬頭をよぎりました。

もちろん孫は可愛い存在です。それでも通帳の残高を見るたびに、ため息が出ることも事実でした。