「こんなこと思うなんて、自分でも嫌になるが……」 そうつぶやいたのは、72歳の山上正一さん(仮名)。 妻と二人で静かに暮らしている正一さんには、3人の子どもと8人の孫がいます。お盆や正月になると家族が集まり、家の中は笑い声でいっぱいに。本来なら、それは幸せな光景のはずでした。しかし正一さんの胸の奥には、誰にも言えない複雑な思いがありました。その内容とは? ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が、事例とともに、老後資金と孫にかけるお金のバランスの考え方について解説します。
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いっそ孫なんていなければ…年金月18万円・72歳祖父、可愛い孫8人に囲まれて幸せな“じいじ”のはずが、減り続ける通帳残高に滲み出る「不穏な感情」【CFPが解説】
気づけば資産は半分に―孫のいないご近所さんとの会話でよぎった感情
正一さんは60歳で定年退職しました。そのときの金融資産は約3,000万円。夫婦二人なら十分だと思っていました。しかし、退職から約12年。通帳の残高は、いつの間にか1,500万円ほどに減っていました。
もちろん減った理由は生活費の取り崩しもあります。しかし、節目ごとに渡してきた孫へのお祝い金の影響も決して小さくありません。年金は夫婦合わせて月18万円ほど。生活はできていますが、夫婦ともに、あと10年、20年生きる可能性を考えると、資産が減っていくのを見るのは大きなストレスでした。
そんなある日、同年代のご近所さんと立ち話をしていたときのことです。
「うちは孫がいないんだ。静かで楽だけど、寂しいよ。山上さんが羨ましい」
そう言われても、正一さんは素直に受け止めることができなくなっていました。孫がいることで、自分たちの老後が脅かされている現実。「逆に羨ましい部分もある。いっそ孫がいなければ、こんな心配もしなくて済むのかもしれない」――そんな考えが一瞬頭をよぎりました。
もちろん孫は可愛い存在です。それでも通帳の残高を見るたびに、ため息が出ることも事実でした。