「住民税非課税世帯」になれば、多様な恩恵を受けられるという言説を耳にすることがあります。しかし、目先の支払いを抑えることばかりに執着し、制度の仕組みを断片的にしか捉えていないと、予期せぬ局面で大きな落とし穴にはまる可能性があります。ある男性が直面したケースから、所得管理だけでは防ぎきれない老後設計のリスクと、現在の社会保障制度が求める負担の公平性について迫ります。
非課税世帯になりたかった…「住民税ゼロ」に執着した67歳男性の誤算。数万円をケチった代償は、要介護の88歳母に突きつけられた「月20万円」の自腹請求 (※写真はイメージです/PIXTA)

「資産」まで捕捉される介護保険制度の現実

加藤さんのケースのように、現在の社会保障制度は単純な「所得」の多寡だけでなく、「資産」を背景とした負担の公平性を重視する傾向を強めています。

 

厚生労働省の「介護保険制度の改正(令和3年8月施行)」資料によれば、施設入所時の食費・居住費の補助(補足給付)に関する預貯金等の判定基準が大幅に厳格化されました。

 

改正前は一律で単身1,000万円、夫婦2,000万円が基準でしたが、現在は所得区分に応じて、単身500万〜650万円、夫婦1,500万〜1,650万円以下にまで引き下げられています。この「預貯金等」には、普通預金のほか、定期預金、投資信託、有価証券なども合算されます。

 

また、内閣府『令和5年版 高齢社会白書』によると、高齢者世帯間の経済格差の拡大に伴い、資産背景まで踏み込んだ給付制限が広がっています。自治体によるマイナンバーを通じた預貯金照会など、資産状況の把握も精緻化されています。

 

納税義務の回避を目的とした所得操作は、目先の支出を減らす効果はありますが、多額の資産を保有している場合、最も負担の大きい施設介護の局面で公的支援から除外されるリスクを孕んでいます。官公庁が提示する資産制限の数値は、所得管理のみに頼った老後設計の限界を明確に示しています。