自宅で自立した生活ができなくなった高齢者が有料老人ホームのような施設に入居した場合、「亡くなるまでケアしてもらえる」と考える家族は多いのではないでしょうか。しかし、実際にはさまざまな理由で退居を余儀なくされ、新しい入居先を探さざるを得ないケースは少なくありません。今回は有料老人ホームの職員や他の入居者への暴言により退居を迫られた高齢者の事例から、適切な入居先の探し方などをCFPの松田聡子氏が解説します。
とんでもないことになった…実家を売り払い、年金月15万円・元職人の父を老人ホームへ入れるも、わずか数ヵ月で「まさかの事態」。48歳息子夫婦が寝室を失い“居間に布団を敷いて眠る日々”を過ごすワケ【CFPの助言】
「まさかの退去」を防ぐためにFPが伝えたい、入居前にできること
岩井家のような事態を防ぐために、入居前の段階でできることがいくつかあります。
1.認知症の進行を想定した施設選びをする
最初から「今の状態」だけで施設を選ぶと、認知症が進行したときに対応できない施設だったと気づくことになりかねません。認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応力が高い施設として、「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」や認知症ケアに特化した有料老人ホームが選択肢となります。施設見学の際には「認知症が進み、暴言や興奮状態が出た場合、どのように対応するか」を確認しておきましょう。
2.契約書・重要事項説明書を家族全員でしっかり確認する
「終身利用」と書かれていても、それは「条件が整っている限り」という前提です。退去事由・退去までの猶予期間・入居一時金の返還ルールは、必ず入居前に家族全員で読み込んでおきましょう。
3.問題が小さいうちに施設側と連携する
施設から「最近、少し興奮することが増えました」といった報告があった段階で、家族が早めに面談を求めて動きましょう。また、認知症専門医(精神科・神経内科)を受診し、適切な治療法を施設と共有できると、退去勧告の回避につながります。
4.「次の選択肢」を常に持っておく
入居後も、グループホームや老人保健施設(老健)など、次の受け入れ先の候補をある程度リスト化しておきましょう。また、特養への申し込みは有料老人ホームに入居中でも可能です。「転居の可能性がゼロではない」と考えるなら、早めに申し込んでおくことも一つの備えです。
老後の施設選びは、今の状態だけでなく5年後・10年後の状態を想定した長期的な視点が欠かせません。そして、万が一の事態に備えた契約内容の確認が、「まさかの退去」を防ぐ最大の備えになるのです。
松田聡子
CFP®