自宅で自立した生活ができなくなった高齢者が有料老人ホームのような施設に入居した場合、「亡くなるまでケアしてもらえる」と考える家族は多いのではないでしょうか。しかし、実際にはさまざまな理由で退居を余儀なくされ、新しい入居先を探さざるを得ないケースは少なくありません。今回は有料老人ホームの職員や他の入居者への暴言により退居を迫られた高齢者の事例から、適切な入居先の探し方などをCFPの松田聡子氏が解説します。
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有料老人ホームで「退去を求められる」のはどんなとき?知っておきたい契約の現実
「老人ホームに入れれば、死ぬまで面倒を見てもらえる」と思っている方は多いのではないでしょうか。しかし実際には、有料老人ホームであっても、一定の条件のもとで施設側から退去を求められる場合があります。
有料老人ホームの重要事項説明書には、退去を求める場合の事由を記載することが義務づけられています(老人福祉法に基づく)。主な退去事由は以下の4つです。
1.医療行為への対応困難
施設で多い退去理由の一つが、高度な医療行為が必要になった場合です。糖尿病が進行してインスリン注射が必要になったときなどは、医療職配置がない施設では対応が難しくなります。
2.長期入院
病気やけがで長期間入院が必要になった場合、退去を求められることがあります。期間の目安は3ヵ月以上としている施設が多くなっています。
3.暴言・暴力などの迷惑行為
他の入居者やスタッフへの暴力・暴言、夜間の奇声、器物損壊などが「通常の介護方法では防止できない」と施設が判断した場合に退去事由となります。認知症の症状によるものであっても、例外ではありません
4.利用料の滞納
再三の督促にもかかわらず支払いが行われない場合も、退去事由となります。
退去を求められた後、多くの施設では退去までの猶予期間を90日程度としています。この期間内に次の入居先を探さなくてはなりません。
有料老人ホームを退去する際には、さまざまな費用が発生する可能性がありますが、特に重要なのは入居一時金や敷金の返還に関するルールです。
施設に支払う入居一時金は、通常、償却期間に基づいて返還されます。入居後、一定の期間内に退去した場合、未償却分が返還される仕組みです。ただし、入居後90日以内の退去であれば、実費(日割り利用料等)を除いた入居一時金が原則全額返還されます。
退去時の費用負担ルールや返還条件については、契約書や重要事項説明書に明記されています。退去前にこれらの内容をしっかり確認しておくことが重要です。