お金を持っていること自体がトラブルの原因となる

シニア世代にとって、「お金持ち」だと知れ渡ることは、現役時代以上のリスクを伴います。

●親族トラブル
相続をきっかけにきょうだい関係がこじれたり、子ども世帯や親族からの援助要請がエスカレートしたり、資産が“当てにされる存在”になることで、家族関係そのものが壊れてしまうこともあります。

●投資詐欺・金融トラブル
高齢者を狙った詐欺や悪質な金融商品勧誘も深刻です。立派な住宅や高級外車などは、「ここにお金がある」という分かりやすい目印になりかねません。 「元本保証」「必ず儲かる」といった甘い言葉で近づき、大切な老後資金を奪う手口は年々巧妙化しています。

●近隣・知人トラブル
資産があると知られることで、「寄付を多めに」「あの人に頼めばいい」といった空気感が生まれ、対等な人間観関係が崩れていくこともあります。

こうしたトラブルは、お金を持っていること自体が原因となって起こります。だからこそ、「目立たない」「語らない」という選択が、有効な防衛策になります。

「貧しく見えることは、バリアを張ることと同じなんです」と市川さんは静かに言います。「『あの人はお金がないから』と思われていれば、誰も騙そうと近づいてこないし、変な期待もされない。それが一番、自由でいられるんですよ」
 

増えた資産を守るための3つの防衛策

特に注意が必要なのが、退職金・相続・不動産売却などで急にお金を手にした人です。生まれつき裕福な家庭で育った人は、幼少期からお金との付き合い方を自然に学んでいます。

しかし、多くの人はそうではありません。突然まとまった資産を手にしても、「守り方」や「管理方法」は身についていません。その結果、高揚感から生活レベルを上げすぎたり、他人に寛大になりすぎたりしてしまいます。

一度上げた生活水準を下げるのは容易ではなく、一度ついた「気前のいい人」というイメージも簡単には消えません。 資産が増えた直後こそ、最も慎重になるべき時期なのです。

では、増えた資産を守るために、何を意識すればよいのでしょうか。 特に重要な3つのポイントを挙げます。

1.生活レベルを急に上げない
住まい、車、旅行、外食など、急激な生活レベルの変化は、周囲の目を引きやすく、トラブルの火種になりかねません。「周りにどう見えるか」を意識することは、資産防衛の第一歩です。

2.お金の相談相手は専門家にする
 お金の話は、信頼できる専門家と家族の最小限にとどめます。「誰に、どこまで話すか」を明確に決めておくことが、防御につながります。税務・相続・運用・生活設計など、それぞれの分野に適した専門家を頼ることで、判断ミスやリスクを大きく下げられます。また、親族や知人などからの無茶な要求には「自分の意思」で断ると角が立ちますが、「FPや税理士に資産の管理を任せているから、勝手に判断できない」など、専門家を「盾」に使うのも有効です。

3.「もしも」に備えた設計をしておく
遺言書、家族信託、任意後見制度など、元気なうちに整えておくことで、将来の不安とトラブルを減らすことができます。