マンションの住民にとって「最悪のケース」

その理事も理事長もマンション管理については素人だとすれば、管理・運営に詳しい管理会社が理事長に説明し、年間行事や予算について議事進行をする。

つまり、「理事長をコントロールできれば理事会もコントロールしやすい」ということだ。

大規模修繕に関わる建築コンサルタントも同様である。理事会に建築の専門家がいない場合は外部の専門家に頼むしかない。コンサルタントが悪意を持って理事会をリードすれば、住民の大切な資産が食いつぶされてしまうのである。

当然、彼らは理事長や理事に、何も考えないままでいてほしいと思っている。そうすれば専門知識を武器にして、言葉巧みに理事長や理事会に近づけるからだ。

最悪のケースは、理事長が詐欺師と組むことである。

理事長は理事会で選任されて住民総会で承認されるため、解任させることは以前は容易ではなかったのだが、理事会で解任できる判例が出て、理事長の暴走を止めることができるようになった。

騙されないためにまず何をすべきか

詐欺師に騙されないために一番大切なことは、住民の一人ひとりが自分たちのマンションに強い関心を持つことである。とは言うものの、すべての住民に今すぐに強い関心を持ってもらうのはかなり難しい。

そこで私が理事長になって最初に行ったことは、せめて理事会のメンバーにだけでも関心を持ってもらうべく、マンションの概要を知ってもらうことだった。

A4用紙1枚の簡単な概要書であったが大変喜ばれ、参考になったと今でも感謝されている。以下がその内容である。

1.総戸数

2.総面積(簡単な図面があればなお良い)

3.年間の総管理費と管理契約内容

4.火災+地震保険の内容

5.年間の収支内容(簡単な表)

6.修繕積立金の額

出典:『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より抜粋
[図表1]マンション設備概要書(住民向け) 出典:『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より抜粋
出典:『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より抜粋
[図表2]管理組合費の年間収支表の例(簡易バージョン) 出典:『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より抜粋

重要なのは「マンションの規模」の把握と、「お金の出入の実態」の把握である。もっと詳細な表が必要であれば、国土交通省が配布している「マンションの建物・設備の概要等」の書類ひな形をご参照願いたい。

このほか、理事全員でマンションの屋上から外部周辺と電気室などの共用部を目で見ることが大切だ。概要を知ると自分が住んでいるマンションを俯瞰的に見ることができるので、ぜひ行ってもらいたい。

詐欺師に真っ先に狙われるのは理事会である。

建山 晃
1級建築士