2025年6月、朝日新聞をはじめ複数のメディアが報じた「住民なりすまし男」のニュース。知人のコンサル会社に工事を受託させるため、住民を装いマンションの修繕会合に参加したとされる事件ですが、これは決して他人事ではありません。大規模修繕の現場には、住民が納めた「多額の修繕積立金」を狙う悪質な業者が紛れ込んでいるかもしれないのです。1級建築士・建山晃氏の著書『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より、その手口と予防策をみていきましょう。
あなたは誰?…マンションの修繕会合に紛れ込んだ“見知らぬ男”の正体。実際にあった「悪質コンサル」の狡猾な手口【1級建築士が警告】
大規模修繕の会合に現れた「見知らぬ2名」の正体は…
2025年6月27日の朝日新聞の1面に『マンションの修繕会合「あなたは誰」』という見出しの記事が載った。
要約すると、千葉県のマンションの修繕委員会に住民ではない他人が2名紛れ込み、修繕委員会を巧みに誘導して、自分たちの知り合いのコンサル会社が業務を受託できるようにしていたのである。
その後この2名は警察に逮捕された。この2名は大規模修繕会社の社員であり、内定していたコンサルタント会社の社長も元社員というわかりやすい(?)構図である。
この工事会社は、本社が大阪府東大阪市にあり東京都内にも拠点を持つ、従業員100名以上の企業である。
私が関係者に聞いた話では、その会社には債務超過の噂があり、元請を有名な会社(ここも今年談合の疑いで立入り検査が行われた)にして、1次下請けで工事をするつもりだったようである。このマンションは1,000戸以上もあり、第1回の大規模修繕の時期であった。
報酬をエサに“協力者”を募集…なりすまし犯の狡猾な手口
朝日新聞の報道によれば、なりすましの方法は極めて狡猾である。
まず、なりすまし犯の男は住民のポストに、一般客を装って飲食店の接客態度を調べるという覆面調査のアルバイト募集のチラシを入れた。ある女性がチラシの連絡先に応募して大阪のマーケティング会社の面接を受けると、仕事内容は「マンションの大規模修繕の調査」ということであった。
担当者が言うには、大規模修繕委員会で不正がないかどうかの内部調査を、マンションの管理会社から依頼されている。そこで担当者は、女性の夫の立場を借りて同会に出席したいと申し出た。
「外部の目が入ることは良いこと」「会議で口を出すことはない」「報酬は毎月1万5,000円相当の商品券」などと言われ、女性は依頼を受けた。女性は他の住民と深い交流がなく、不審に思われる心配はなかった。
そして男は、怪しまれないよう子供の生年月日や車の車種まで教え、共用部分の鍵まで作らせた。しかし男は、委員会で女性の夫と名乗り、積極的に発言していたことがわかった。
朝日新聞の報道では、千葉と神奈川の別のマンションでも同様の事件を起こしていたという。こうなると大規模修繕委員は身元確認が必要になってくる。