日本の年金制度は、一貫して「申請主義」というルールの上に成り立っています。国が個人の状況を察知して「あなたは受給資格があるからお金を振り込みますね」と手を差し伸べてくれることはありません。どれだけ真面目に保険料を納めてきたとしても、自らが申請を行わないと、年金を受け取ることはできないのです。
うっ、うそだろ…年金月16万円・67歳男性、絶句。年金事務所で告げられた「受け取れていない年金」の正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

67歳男性、寝耳に水…受け取れていない年金の存在

「まさか、自分から確認しないともらえないなんて、思ってもみませんでした」

 

都内に住む佐藤健一さん(67歳・仮名)は、そう振り返ります。佐藤さんは長年、中堅メーカーで勤務し、65歳からは月16万円の年金を受け取っていました。妻は3歳年下で専業主婦。退職後は年金と再雇用収入で穏やかな生活を送っていけると思っていたそうです。転機は、同僚との何気ない会話でした。

 

「加給年金は確認したか?」

 

その言葉に、佐藤さんは疑問と戸惑いでいっぱいになったといいます。加給年金……それは彼が初めて意識した制度でした。不安を覚えた佐藤さんは、年金事務所に相談へ行くことにしました。

 

担当者の説明によれば、佐藤さんは受給要件を満たす可能性があるとのこと。ただし、加給年金は老齢厚生年金の裁定請求内容に基づいて決定されるため、配偶者に関する届出がなければ加算されない仕組みになっているという説明を受けました。

 

「初耳のことばかりで、思わず『うそだろ』という言葉以外、でませんでした」

 

自宅に戻り、書類を確認すると、65歳到達前に日本年金機構から「年金請求書」が届いており、その請求書には配偶者に関する記載欄もあったことがわかりました。制度内容を十分理解しないまま提出していたため、加給年金を受け取れずにいたのです。

 

「書類は確かに受け取っていました。ただ、加給年金の意味までは深く考えていなかったんです」

 

結果として、要件を満たすことが確認され、手続き後に過去2年分を遡って支給を受けることができました。年金には5年の時効があるため、今回のケースでは全額が受給対象となりました。

 

佐藤さんはこう語ります。

 

「最初は『なぜ役所は教えてくれないのだ。隠しているんじゃないか』と思いました。もちろん、役所は隠していたわけではなかった。ただ、自分から調べなければ制度の全体像は見えてこない。そこに難しさを感じました」

 

現在は振替加算の仕組みについても確認し、今後の受給見込みを整理しているといいます。